CPRA news Review

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教えて、先生!【第1回】

【第1回】アーティストやミュージシャンにも著作権ってあるの?

自分の歌声や演奏を勝手に使われたとき、どうしたらいいんだろう?
CPRAってなに?
念願のデビューを果たしたばかりの新人アーティスト、ネコ吉君の素朴な質問に先生が答えます。
第1回目は「アーティストやミュージシャンにも著作権ってあるの?」あれあれ、ネコ吉君、なにやら困っている様子ですが…?

第1回アーティストやミュージシャンにも著作権ってあるの?

ネコ吉くん
ネコ吉くん

アマチュア時代のライブ音源が
勝手にSNSで拡散されているみたいなんだけど…

先生
先生

悪気はなくても、勝手に拡散されるのは困ってしまうね…
ところで、ネコ吉君は「著作隣接権」って知ってる?

ネコ吉くん
ネコ吉くん

「チョサクリンセツケン」?「著作権」とは違うの?

先生
先生

「著作権」は、曲や小説、漫画などの作品を作る人の権利だね。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

僕のデビュー曲でいえば、
詞や曲を書いたイヌコさんが「著作権」を持ってるってことだね。

先生
先生

「著作権」とは別に、ネコ吉君のように、歌ったり、演奏したりするアーティストやミュージシャンには、「著作隣接権」という権利があるんだよ。
ネコ吉君は「著作隣接権」を持っているから、勝手にSNSで拡散しないように止めることができるんじゃないかな?

ネコ吉くん
ネコ吉くん

へぇ、知らなかった!
もっと詳しく教えて…

<解説>

どうやらネコ吉君は「著作権」と「著作隣接権」の違いをよく理解していないようです。
そんなネコ吉君のためにも、第1回では、著作権法が実演家に認めている権利の全体像をわかりやすく説明したいと思います。

著作権法は、作詞・作曲者であるイヌコさんのような著作者に「著作権」を認めるほか、ネコ吉君のようなアーティストやミュージシャン(実演家)に「著作隣接権」を認めています。著作物等は、創作されただけでは他の人がそれを楽しむことはできません。多くの人に届けられることによって、より多くの鑑賞の機会が生じ、ひいては文化の発展に寄与するわけです。そこで、著作物等を創作したわけではなくても、それを伝達する者もまた文化の発展に寄与する者として、著作隣接権が認められているのです。また、同じ著作物を演じたとしても実演家ごとにその実演に個性が表れることからもわかるように、実演行為には、著作物の創作行為と同じように創作的要素が含まれていると言ってよいでしょう。それゆえに実演家に著作隣接権が認められているともいわれます。
なお、著作権法は、実演家に加えて、レコード製作者と放送事業者(有線放送事業者を含む)にも著作隣接権を認めています。著作権も著作隣接権も、権利の発生のために登録は不要です。

ところで、もし今回SNSで勝手に拡散された楽曲がレコード会社を通じて発売されたものだったとしたら、誰にどのような権利が認められるでしょう?イヌコさんには自分が作詞・作曲した楽曲の著作権が、ネコ吉君には実演(ここでは歌唱と演奏)についての著作隣接権がそれぞれ認められ、レコード製作者(ここではレコード会社)にも著作隣接権が認められることになります。

もし楽曲がレコード会社を通じて発売されたとしたら...

では、ネコ吉君は著作隣接権を持っていることで、具体的にどんなことを主張できるのでしょう?

実演家の著作隣接権には、経済的な利益を保護するための財産的権利(財産権)と精神的に傷つけられないという人格的な利益を保護するための権利(実演家人格権)が含まれます。 このうち、財産的権利としての著作隣接権には、2種類の権利があります。1つはA①「自分の承諾なく他人に~されない権利(他人による無断利用の中止を求められる権利)」で、もう1つは、A②「利用中止を求めることはできないが、利用の対価を請求できる権利」です。

A①は「許諾権」と呼ばれ、たとえば、無断で自身の実演を録音されない権利(「録音権」)や、動画共有サイトを含むネット上にアップされない権利(「送信可能化権」)などです。A②は「報酬・補償金請求権」と呼ばれ、たとえば、自身の実演が録音された市販CDがテレビ放送で利用された場合に二次使用料を請求できる権利などです。なお、著作隣接権(財産権)は他人に譲渡することができ、相続もされますが、実演家人格権は譲渡や相続はできず、放棄することもできないと考えられています。

さて、ネコ吉君と先生の会話に戻ると、著作者ではなく実演家であるネコ吉君は、著作権は持っていませんが、許諾権である著作隣接権(録音権、送信可能化権)を持っています。そこで、自身の実演を無断で録音する行為や、それを無断でSNSにアップして拡散することを止めるよう求めることができるのです。

著作隣接権の詳しい内容については、ぜひこちらをご覧ください。

今回教えていただいた先生

小林利明 先生 弁護士(日本・ニューヨーク州)/東京藝術大学非常勤講師

2006年慶應義塾大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。2013年New York University修了(LLM)。現在、骨董通り法律事務所パートナー。放送番組・映像製作、音楽、芸能事業等を行う複数の会社にパートタイム企業内弁護士として出向経験を有する。国際バスケットボール連盟公認代理人。主著として、「エンタテインメント法実務」(編著、弘文堂、2021)、「『デレブ』のパブリシティ権」ジュリスト1529号(2019年)ほか。