CPRA news Review

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教えて、先生!

【第2回】プロじゃなくても「著作隣接権」ってあるの?

自分の歌声や演奏を勝手に使われたとき、どうしたらいいんだろう?
CPRAってなに?
念願のデビューを果たしたばかりの新人アーティスト、ネコ吉君の素朴な質問に先生が答えます。
第2回は「プロじゃなくても『著作隣接権』ってあるの?」。前回、歌って、ギターを演奏している自分には「著作隣接権」があると知ったネコ吉君。とはいえ、アマチュア時代のライブだからな、と少し弱気だったのですが…

第2回プロじゃなくても「著作隣接権」ってあるの?

ネコ吉くん
ネコ吉くん

SNSで拡散されたのはアマチュア時代のライブ音源で、デビュー前のものだけど、「著作隣接権」はあるの?

先生
先生

「著作隣接権」が認められる「実演」は、プロの実演家のものである必要はないんだよ。
だから、アマチュア時代の歌声や演奏(実演)が勝手に使われることに対して、ネコ吉君は止めるようお願いできるんだ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

そうなんだ!
それじゃあ、ぼくがアマチュア時代にギタリストとして演奏したライブ音源についても、「勝手に使うのを止めて!」って言えるの?

先生
先生

もちろん!
メインボーカルも、バンドメンバーも、同じ「実演家」だからね。自分の実演については、著作隣接権を持っているんだよ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

へぇ~。バンドメンバーにも権利があるのかぁ。

今度のライブで伝説のギタリスト、ライオーンの真似をした演奏をしようと思っていたんだけど、止めることにするよ。ライオーンの著作隣接権侵害になっちゃうもんね。

先生
先生

ライオーンさんに「著作隣接権」があるのは、自分の実演についてだけなんだよ。
だから、ネコ吉君がライオーンさんの真似をして演奏しても、ライオーンさんの著作隣接権侵害にはならないよ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

えっ、どういうこと?もっと詳しく教えて!

<解説>

ネコ吉君は、プロのミュージシャンの実演だけに著作隣接権が認められ、保護されると思い込んでいたようです。
しかし、日本の著作権法は、プロによる歌唱・演奏であるかアマチュアによるものかを分けて考えていません。いずれも等しく保護されるのです。
もっとも、当然のことながら、実演家に認められる著作隣接権は、「実演家」でない者には認められません。
では、「実演家」とはどのような人をいうのでしょうか

実は、「実演家」には2種類のタイプがあります。
1つは ①自ら実演を行う実演家で、もう1つは ②他人の実演を指揮・演出する実演家 です。著作権法の条文では、「実演家」とは「①俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び②実演を指揮し、又は演出する者をいう」とされています(著作権法2条1項4号。番号は筆者が振ったものです)。

そして著作権法は、上記①②にいう「実演」という言葉に特別の意味を持たせています。
つまり、「実演」とは、「①著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(②これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)」をいいます(著作権法2条1項3号)。
これをまとめると、次の表のようになります。

この表からもわかるとおり、実演家①は、実演①か実演②を行う者のことを指します。たとえば、歌手や演奏家が実演①を行う者であることは明白でしょう。
また、曲芸や手品は、実演②に当たると考えられています。また、オーケストラの指揮者は、実演家②の典型例です。

ところで、「音」の創り方は時代や技術の進化とともに変わります。
たとえば、いわゆる「打ち込み」(シーケンサー等の電子機器に演奏情報を入力する行為)は「実演」に当たるのでしょうか。
芸団協CPRAでは、コンピュータで音楽制作を行うといっても、音を奏でることにおいて従来の楽器と異なるものではないのでシンセサイザーを「楽器」と考えて差し支えないとした上で、シンセサイザーを利用して音楽制作を行うプログラマは、楽器を奏でて演奏する演奏家と同様に実演家として扱われ、使用料の分配が行われています。VOCALOIDに代表される音声データソフトで音楽を制作する「ボカロP」も同様の考えから、芸団協CPRAでは実演家として扱われ使用料の分配が行われています(ただしいずれの場合も、使用料分配を受けるためには、所定の団体に加入しCPRAに権利委任を行う必要があります。この点については 「使用料を受け取るにはどうしたらいいですか?」(https://www.cpra.jp/faq/)もご覧ください)。

さて、ネコ吉君は、ライオーンを真似て演奏すると、ライオーンの著作隣接権を侵害してしまうと思っていたようです。しかしそれは誤解です。
著作隣接権は個々の実演行為について発生する権利ですので、他人の実演そのものを利用しない場合は、権利侵害とはなりません
つまり、ライオーンの代名詞と言えるギター奏法を真似したり、そのバンドのボーカルの特徴的な歌い方を真似たとしても、ライオーンらの実演そのものを利用していないならば、彼らの著作隣接権(録音権・録画権、送信可能化権等)や実演家人格権の侵害となることは通常ありません。

ただし、ライオーンのバンドの楽曲を演奏するのであれば、楽曲についての音楽著作権の処理は必要になります(JASRACやNexToneの管理楽曲であれば、それらの管理事業者への利用申請が必要となります)。
また、勝手にライオーンの肖像や名前を利用してコンサートを開催するなどといった場合は、肖像権侵害やパブリシティ権侵害になる可能性があるので、注意する必要があります。
肖像権とは、自己の容貌を無断で撮影されたり撮影された写真等を公表されない権利をいい、パブリシティ権とは、自己の肖像等が有する顧客吸引力(購買意欲を高める効果のこと。プロモーション効果とも言ってよいでしょう。)を無断で使われない権利をいいますが、これについてはまた別の機会にもう少し詳しく説明したいと思います。

今回教えていただいた先生

小林利明 先生 弁護士(日本・ニューヨーク州)/東京藝術大学非常勤講師

2006年慶應義塾大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。2013年New York University修了(LLM)。現在、骨董通り法律事務所パートナー。放送番組・映像製作、音楽、芸能事業等を行う複数の会社にパートタイム企業内弁護士として出向経験を有する。国際バスケットボール連盟公認代理人。主著として、「エンタテインメント法実務」(編著、弘文堂、2021)、「『デレブ』のパブリシティ権」ジュリスト1529号(2019年)ほか。