CPRA news Review

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教えて、先生!【第3回】

【第3回】ライブと録音物で違いがあるの?

自分の歌声や演奏を勝手に使われたとき、どうしたらいいんだろう?
CPRAってなに?
念願のデビューを果たしたばかりの新人アーティスト、ネコ吉君の素朴な質問に先生が答えます。
第3回は、「ライブと録音物で違いがあるの?」。デビュー・シングルがラジオで流れて大喜びのネコ吉君ですが、「著作隣接権」についてとても大切なことに気づきます。

第3回ライブと録音物で違いがあるの?

ネコ吉くん
ネコ吉くん

先生、聞いて聞いて。なんと、僕のデビュー・シングルが、ごりラジオで放送されたんだよ!レコード会社の担当の人がみつけて教えてくれたんだ。思わずハイタッチしちゃったよ!

先生
先生

それは良いニュースだね!
ネコ吉君の音楽活動が順調なようで、先生も嬉しいよ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

あれ?でも先生。この間の話だと、僕には、ライブ演奏を勝手に録音されたり、SNSで拡散されたりしない権利があったんだよね?
どうして今回、僕の曲が放送で使われるのに事前に確認がなかったのかな。

教えて、先生!【第1回】を参照

先生
先生

いいところに気づいたね。それは、ライブ演奏と、録音物とでは、権利の内容が違うからなんだよ。
録音物の場合には、ライブ演奏とちがって、「勝手に放送されない権利(放送権)」はないんだけど、ネコ吉君のデビュー・シングルみたいな市販されている録音物(商業用レコード)については、「放送を止めることはできないけど、使用料をもらうことができる権利(報酬請求権)」があるんだよ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

なるほど~。だから、ラジオ局から事前に確認がなかったのか。
でも、ライブ演奏と録音物とで、放送する時の権利が違うなんて今まで意識したことなかったよ。

先生
先生

違いがあるのは放送だけじゃないよ。

ネコ吉くん
ネコ吉くん

そうなんだ!もっと詳しく教えて!

<解説>

ネコ吉君のデビュー曲の滑り出しは上々のようですね。ここから一気にスターダムに駆け上っていくのでしょうか。なんだか遠くに行ってしまうようで少し寂しい気もしますが、ネコ吉君がビッグになったときに「今さら恥ずかしくて聞けないし...」とならないように、今回は、実演家に認められる著作隣接権のうち、財産的権利の内容は、ライブなど生の実演の場合と録音物に収録された実演(レコード実演)の場合とで異なっていることについて、説明したいと思います。

1.生の実演について

実はネコ吉君のデビューのきっかけは、アマチュア時代に精力的に行っていた路上ライブがレコード会社の担当者の目にとまったことでした。
著作権法は、路上ライブなどの生の実演について、実演家に3つの権利を認めています。

生の実演について認められる実演家の著作隣接権(許諾権) 録音権・録画権(91条)
放送権・有線放送権(92条)
送信可能化権(92条の2)

(1)録音権・録画権

まず、実演家には、生実演を無断で録音・録画されない権利が認められています(録音権・録画権)。ですから、ネコ吉君の路上ライブを勝手にスマートフォンで録音したり動画撮影したりすることは、ネコ吉君の録音権・録画権を侵害することになります(ただし、私的に楽しむ目的で行う場合など著作隣接権侵害とはならないケースもあります)。

(2)放送権・有線放送権

実演家は、生実演を無断でテレビやラジオで放送・有線放送されない権利(放送権・有線放送権)も持っています。録音・録画はされない場合でも、ネコ吉君の路上ライブをテレビやラジオで生放送すると、ネコ吉君の放送権・有線放送権を侵害することになります。

(3)送信可能化権

実演家はさらに、生実演を無断でインターネット上にアップされない権利(送信可能化権)も持っています。録音・録画はされない場合でも、ネコ吉君の路上ライブをYouTuberが生配信すると、ネコ吉君の送信可能化権を侵害することになるわけです。

2.録音物に収録された実演(レコード実演)について

ところで、アーティストやミュージシャンの活動はライブ活動だけではありません。スタジオでレコーディングを行い、それを収録したCDや配信音源も販売されます。今回ラジオで放送されたネコ吉君のデビュー曲も、ネコ吉君のバンドの生の歌唱・演奏をマスター音源として録音し、それを元に作られた市販CDが利用されたものでした(ちなみに、著作権法は、市販されるCDなどの録音物を「商業用レコード」と呼んでいます)。実演家には、生の実演についてだけでなく、レコード実演についても著作隣接権が認められています。

以下では、レコード実演についてネコ吉君が持っている権利を見ていきましょう。

レコード実演について認められる実演家の著作隣接権(許諾権) 録音権(91条)
放送権・有線放送権(92条)
送信可能化権(92条の2)
譲渡権(95条の2)
貸与権(95条の3)
レコード実演について認められる実演家の著作隣接権(金銭的請求権)の例 商業用レコードが放送・有線放送で使用される場合(95条)
商業用レコードが発売後2年目以降に貸与される場合(95条の3)
私的録音録画補償金(102条1項による30条3項の準用)

(1)録音権

実演家には、生の実演についてだけでなく、レコード実演についても録音権が認められています。市販CDをコピー(録音)する行為も、ネコ吉君の録音権を侵害することになるということです(ただし、私的に楽しむ目的で行う場合など著作隣接権侵害とならないケースもあります)。

(2)放送権・有線放送権

放送事業者がネコ吉君の生実演を放送するためにはネコ吉君の許諾が必要ですが、レコード実演を放送するのに許諾は不要です。言い換えれば、ネコ吉君は、自分の生の実演が無断で放送された場合は権利侵害だと主張できますが、ネコ吉君の許諾に基づき録音されたレコード実演が使われる限り、ネコ吉君に断りなく放送されても何も言えないのです。そのかわりに、ネコ吉君には、市販CDなどの「商業用レコード(ここでは、配信音源も含まれます)」が放送で使われた場合は、二次使用料を得る権利が認められています。
なお、二次使用料の支払いが円滑適正に行われるために、二次使用料を得る権利は個々の実演家ではなく、文化庁長官の指定を受けた芸団協CPRAだけが行使できることになっています。つまり、芸団協CPRAだけが二次使用料を徴収することができるのです。芸団協CPRAが徴収した二次使用料は権利委任団体を通じて実演家等に分配されています。

以上は、有線放送権についても、基本的に同じです。放送との関係では、著作権法は細かな例外を他にも設けていますが、細かい話になるのでここでは割愛しましょう。

(3)送信可能化権

実演家には、レコード実演についても送信可能化権が認められています。市販CDをインターネット上にアップすることをやめるよう求めることができるというわけです。音楽配信サービスで利用される場合にも、許諾を得る必要があります。

(4)譲渡権、貸与権

その他、実演家には、「譲渡権」(実演が収録された録音物を無断で公衆に〔=不特定又は多数の者に〕譲渡されない権利)と「貸与権」(商業用レコードを無断で公衆にレンタルされない権利)が認められています。

もっとも、一度適法に譲渡された録音物については、実演家はその後の譲渡について権利は行使できません。例えば、中古CDショップで売られたとしても、権利侵害になりません。また貸与権は、最初にCDなどが発売されてから1年間だけ認められている権利です(その後は、レンタル行為を禁止するよう求めることはできない代わりに、報酬請求権が認められます。この報酬を受ける権利も二次使用料と同様、芸団協CPRAが文化庁長官の指定を受けて、実演家等に代わり徴収・分配しています)。

(5)その他

上述したもののほか、私的録音録画補償金請求権などがあります。

3.最後に

今回は生の実演とレコード実演について認められる実演家の著作隣接権のうち財産的権利について簡単に説明しました。こちらに詳しい説明も載せているので、ぜひご覧ください。

ところで、第1回で説明した通り、著作隣接権のうち財産的権利は譲渡することができます。たとえば、CDアルバムを制作したり、音楽配信したりする場合などレコード会社との契約では、CDアルバム制作や音楽配信に必要なすべての財産的権利をレコード会社に譲渡するとされている場合が多くあります。このような場合、市販CDが放送に使用されたり、レンタルされたりしたときに芸団協CPRAが放送局などから徴収した使用料を受け取るのとは異なり、CDアルバムの販売や音楽配信による対価は、レコード会社から受け取ることになります。

さて、今回は、これまでと比べてもやや難しい話になってしまったかもしれません。細かい話はさておき、覚えておくべき大事なことは、①実演家には、生の実演についてもレコード実演(録音された実演)についても著作隣接権が認められていること、そして、②生演奏について認められる著作隣接権とレコード実演について認められるそれとは内容が違うこと、です。
ということで、今回はここまでにしましょう!

(そういえば、ネコ吉君のデビュー曲のタイトルは何でしたっけ...?)

今回教えていただいた先生

小林利明 先生 弁護士(日本・ニューヨーク州)/東京藝術大学非常勤講師

2006年慶應義塾大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。2013年New York University修了(LLM)。現在、骨董通り法律事務所パートナー。放送番組・映像製作、音楽、芸能事業等を行う複数の会社にパートタイム企業内弁護士として出向経験を有する。国際バスケットボール連盟公認代理人。主著として、「エンタテインメント法実務」(編著、弘文堂、2021)、「『デレブ』のパブリシティ権」ジュリスト1529号(2019年)ほか。



教えて、先生! シリーズ
≫【第1回】アーティストやミュージシャンにも著作権ってあるの?
≫【第2回】プロじゃなくても「著作隣接権」ってあるの?