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デジタル単一市場に対応するドイツ著作権法改正について

著作隣接権総合研究所 君塚陽介

2021年5月31日、ドイツにおいて著作権法改正などを含む「デジタル単一市場に求められる著作権に対応するための法律」が成立した。今回の改正は、2019年にEUにおいて採択された「デジタル単一市場における著作権及び関連権に関する指令(以下「DSM著作権指令」)」(DIRECTIVE (EU)2019/790)に対応するためのもので、

(1)「著作権法」(UrhG)の改正
(2)「集中管理団体法」(VGG)の改正
(3)「オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダの著作権法上の責任に関する法律」(UrhDaG)の制定

により構成され、改正内容も多岐にわたっている。
この回では、DSM著作権指令の関連規定も参照しながら、「オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダの責任」及び「拡大集中許諾制度の創設」について紹介する。

1.オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダの責任

(1)DSM著作権指令の概要
いわゆる「バリューギャップ問題」の解決など※1、採択に至るまでに様々な議論が重ねられた結果、DSM著作権指令は、ユーザーがコンテンツをアップロードし、視聴することができる動画共有サイトなどにおいて、著作物等の利用行為主体は誰か、どのような場合に責任を負うのかなどを定めた。
すなわち、営利目的で、ユーザーがアップロードしたコンテンツを保存し、公衆に提供することを主な目的とする情報サービスプロバイダを「オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダ」と定義して(DSM著作権指令2条6項)、DSM著作権指令17条において具体的に責任を負う場合などを定めている。

まず、ユーザーによってアップロードされたコンテンツが公衆に提供されている場合に、オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダを、そのようなコンテンツを公衆への伝達または公衆に利用可能化している利用行為主体と位置付け、必要な利用許諾を得なければならないとしている(DSM著作権指令17条1項)。そして、このような利用許諾が得られない場合には、次のことについて最善の努力をしなければ、オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダは責任を負うとしている。

DSM著作権指令17条4項
(a)許諾を得ること
(b)高度な業界水準にしたがって、権利者により必要な情報が提供されたコンテンツを利用できないようにすること
(c)権利者から十分な理由を示した通知を受領した後、アップロードされたコンテンツを削除するなどの対応をし、その後もアップロードされることがないように防止すること

その一方で、加盟国に対して、コンテンツをアップロードするユーザーに配慮した規定も定められている。例えば、ユーザー自ら作成したコンテンツ(いわゆる「User-Generated-Content:UGC」)がアップロードされる場合について、引用やパロディなどを目的とした著作物等の利用ができるようにするほか(DSM著作権指令17条7項)、アップロードされたコンテンツが削除などされた場合について不服申立手続を導入することなどである(DSM著作権指令17条9項)。

(2)ドイツ改正法の概要
ドイツでは、DSM著作権指令を国内法化するため、著作者など権利者を保護しつつ、ユーザーが自ら創作したコンテンツを適法にアップロードするような場合にも配慮しながら、「オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダの著作権法上の責任に関する法律」(UrhDaG)を新たに制定した。
ユーザーによりコンテンツがアップロードされた場合、オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダがとるべき対応の概要は、以下の図※2のとおりとなっている。

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まず、オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダ(UrhDaG2条1項参照。以下「サービスプロバイダ」という)は、ユーザーによりアップロードされた著作物を公衆に提供している場合には、サービスプロバイダが公衆への伝達の主体であるとしている(UrhDaG1条1項)。
このような場合、サービスプロバイダは、公衆への伝達について、権利者から利用許諾を得るために最善の努力をしなければならない(UrhDaG4条1項)。ただし、権利者からの要求に応じて、ブロッキングや削除などにより、アップロードされたコンテンツが公衆に提供されないようにする義務などを果たすとともに、権利者やアップロードするユーザーのための不服申立手続などを用意している場合には、著作権法上の責任は負わないとしている(UrhDaG1条2項、7条1項)。

他方、多種多様かつ大量にアップロードされるコンテンツが、著作権を侵害するか否かなどが明らかではない場合もある。しかも、過剰なブロッキングが行われてしまうと、ユーザーによる表現の自由を脅かすおそれもある。

そこで、今回の改正では、ユーザーによりアップロードされたコンテンツが、引用による利用(UrhG51条)をはじめ、今回の著作権法改正で新たに設けられたカリカチュア、パロディ又はパスティシュに基づく利用(UrhG51a条)にあたる場合には、サービスプロバイダは責任を免れることにしている(UrhDaG5条1項)。

また、アップロードされるコンテンツがUGCである場合に、過剰なブロッキングを避けるため、「法律により許されることが推定される利用」との考え方を導入している。すなわち、第三者の著作物の利用が半分未満であり、利用される著作物とコンテンツの間に結び付きがあり、かつ、小部分の利用にとどまる場合には※3、「法律により許されることが推定される利用」としたのである(UrhDaG9条)。
 しかしながら、このような利用は、法律により許されることが推定されるに留まり、権利者及びユーザー双方のために異議申立手続が用意されている。なおかつ、権利者に対しては、人による確認を経て、明らかに違法であり、経済的損害が及ぶ場合には、異議申立手続が確定するまでの間、一時的にオフラインにすることができる仕組みも用意されている(UrhDaG14条4項、いわゆる「赤ボタン」方式)。

2.拡大集中許諾制度の創設

(1)EU指令における拡大集中許諾制度の概要
1960年代に北欧諸国において導入された拡大集中許諾制度は、EU指令のレベルでも取り上げられることになる。
まず、1993年衛星放送・ケーブル再送信指令(DIRECTIVE93/83/EEC)において、ケーブル再送信に係る排他的権利は、集中管理団体を通じてのみ行使し得るとする強制的な集中管理を導入し、2019年オンライン再送信指令(DIRECTIVE (EU)2019/789)では、ケーブル再送信だけでなく、一定オンライン再送信にも強制的な集中管理を拡張している。
また、2001年情報社会指令(DIRECTIVE2001/29/EC)前文18のほか、2012年孤児著作物指令(DIRECTIVE2012/28/EU)前文24や2014年集中管理団体指令(DIRECTIVE2014/26/EU)前文12でも、加盟国は、拡大集中許諾制度の導入を妨げるものではないと述べられている。

そして、DSM著作権指令では、文化遺産機関が所蔵する絶版等著作物の利用に関する拡大集中許諾制度の導入を加盟国に義務付けたほか(DSM著作権指令8条以下)、加盟国による導入は任意とする「拡張効果を有する集中許諾」(拡大集中許諾制度)を定め、加盟国が導入する根拠を与えた(DSM著作権指令12条)。
DSM著作権指令では、加盟国が導入することできる拡大集中許諾制度の仕組として、次の二つを用意している。

DSM著作権指令12条1項
(a)集中管理団体が利用者との間で利用許諾契約を締結する場合、集中管理団体に委任などしていない権利者(アウトサイダー)に係る著作物等の利用についても、当該利用許諾契約の効果が拡張されるもの
又は
(b)集中管理団体が、アウトサイダーについても法律に基づく委任を受けている、又は代表しているものと推定されるもの※4

さらに、拡大集中許諾を適用することができる範囲は、著作物及びその他対象物に係る利用の性質又は種類に鑑みて、利用者が権利者から個別に許諾を得るための取引費用が必要とされ、かつ現実的ではない場合であって、明確に定められた範囲 (well-defined areas of use)でなければならず、権利者の正当な利益の保護を保障しなければならないとしている(DSM著作権指令12条2項)。

また、拡大集中許諾を与える集中管理団体は、2014年集中管理団体指令に基づく加盟国の国内法の基準を満たしつつ、次の措置を講じなければならないとしている。

DSM著作権指令12条3項
(a)集中管理団体が代表者性を有すること
(b)すべての権利者を平等に取り扱うこと
(c)アウトサイダーは、いつでも容易かつ効果的な方法で、離脱(いわゆる「オプトアウト」)できること
(d)拡大集中許諾によって与えられる利用許諾及びアウトサイダーに与えられる選択肢などについて適切な公表措置が講じられること

(2)ドイツにおける拡大集中許諾制度の創設について
ドイツでは、絶版等著作物に関する拡大集中許諾を導入していたが(旧VGG51条以下)、今回の法改正により、DSM著作権指令8条以下に定める文化遺産機関による絶版等著作物の利用に関する規定に合せて拡充するとともに(VGG52条以下)、DSM著作権指令12条に沿って、新たな拡大集中許諾制度を導入した(VGG51条以下)。

新たに導入された拡大集中許諾制度では、一定の要件をみたす集中管理団体は、集中管理団体との間で当該利用について契約上の管理関係のないアウトサイダー(VGG第7a条)の著作物についても利用許諾を与えることができるとした(VGG51条1項)。もっとも、アウトサイダーは、このような拡大集中許諾に対していつでも異議を申し立てることができるとしている(VGG51条2項)。

集中管理団体が、拡大集中許諾を与えるためには、

① 当該集中管理団体が代表者性を有すること(VGG51a条1項1号)
② 利用者又は集中管理団体がアウトサイダーから許諾を得る、又は権利の管理契約を締結することが不合理であること(VGG同条同項2号)
③ 利用許諾の対象となる範囲はドイツ国内に限定されること(VGG同条同項3号)
④ 対象となる利用態様などに関する情報を少なくとも3ヶ月ウェブサイトなどで提供すること(VGG同条同項4号)
⑤ アウトサイダーからの異議申し立てがないこと(VGG同条同項5号)
との要件を満たさなければならない。

また、集中管理団体が、
① 集中管理団体が権利者の相当数について権利行使する場合(VGG51b条1項)
又は
②ドイツ特許商標庁から許可(VGG77条)を受けている場合(VGG51条2項)
には、代表者性を有するものと推定されるとする。

このほか、アウトサイダーが異議を申し立てるための手続や拡大集中許諾を行う集中管理団体による情報提供などの詳細については、政令により定めることとしている(VGG52d条)。

3.結びに代えて

今回の法改正では、新たな拡大集中許諾制度が、オンライン・コンテンツ共有サービスプロバイダの責任に対する解決策となることも期待されている※5。すなわち、サービスプロバイダは、利用許諾を得るために最善の努力を尽くさなければならないが(UrhDaG1条1項、4条1項)、大量かつ多種多様なコンテンツがアップロードされる中で、拡大集中許諾を通じて利用許諾が得られることになれば、サービスプロバイダにとっても簡便な処理が実現できるし、権利者にとっても報酬を得ることが可能になるというのである。
EU加盟国は、2021年6月7日までにDSM著作権指令を国内法化しなければならないとしているが(DSM著作権指令29条1項)、どのような形でDSM著作権指令が履行されるのか、その動向に注目する必要があるだろう。




【脚注】

※1 「バリューギャップ問題」やDSM著作権指令については、榧野睦子「『バリューギャップ』問題の解決に向けて~広告型ストリーミング・サービスを巡る欧米の動き~」CPRA news 83号(2017年)、同「『バリュー・ギャップ』問題の解決に向けて~その後のEUでの検討状況」CPRA news 87号(2018年)、同「『バリューギャップ問題』の解決に向けて-EU新指令採択-」CPRA news 93号(2019年)を参照 (▲戻る)

※2 ドイツ法務・消費者保護省による改正法案に関するFAQに記載された図を基に作成
https://www.bmjv.de/SharedDocs/Gesetzgebungsverfahren/Dokumente/RegE_Gesetz_Anpassung_Urheberrecht_digitaler_Binnenmarkt_FAQ.pdf?__blob=publicationFile&v=5 (▲戻る)

※3 「小部分」の利用であるために、動画や音楽の場合には15秒まで、文書の場合には160字まで、画像の場合には125キロバイトまでと具体的に定められている(UrhDaG10条)。 (▲戻る)

※4 例えば、具体的には、集中管理団体は、関係する権利者から法律に基づき委任を受けているものとしたり、代表しているものと推定されたりする仕組みが考えられよう。 (▲戻る)

※5 BT-Drs.19/27426, 49のほか、※2の改正法案に関するFAQも参照。 (▲戻る)