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著作権法の一部を改正する法律について

芸団協CPRA 法制広報部

2021年5月26日に著作権法の一部を改正する法律が成立した。今回の著作権法改正の大きな柱のひとつである「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化」の概要について報告する。

これまでの経緯

2020年度、著作権分科会では「基本政策小委員会」を新たに設置し、同小委員会に「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム」を設け、議論が進められた。同ワーキングチームの報告書は、基本政策小委員会に報告され、同小委員会での議論も踏まえて、「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ」がとりまとめられた。この中間まとめにはパブリックコメントも実施され、芸団協CPRAからも意見を提出している(詳細はCPRA news 98号をご参照ください)。
同小委員会では、パブリックコメントの結果も踏まえつつ取りまとめた報告書を、著作権分科会に報告し、2021年2月3日に著作権分科会は「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書」(以下「報告書」)を取りまとめた。
この報告書を受けて法案作成が進められ、2021年3 月5日には「著作権法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出。5月18日の衆議院を経て、5月26日の参議院において可決、成立した。

改正著作権法の主な内容

1)「放送同時配信等」の定義 (2条1項9号の7)

「放送同時配信等」を、放送番組等の自動公衆送信のうち、放送等が行われた日から一週間以内に行われるものであること、放送番組等の内容を変更しないで行われるものであること、デジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置が講じられているものであること等の要件を備えるものと定義すること。

放送同時配信等」は、放送番組の同時配信のほか、「追っかけ配信」(放送が終了するまでの間に配信が開始されるもの)や、一定期間の「見逃し配信」(原則として放送から一週間までであるが、間隔が一週間を超える場合には、一ヶ月以内で文化庁長官が定める期間)が対象となっている。
また、フタかぶせなど、やむを得ない事情による変更は、放送番組等の内容の変更にはあたらない
なお、著作権者等の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして、文化庁長官が総務大臣と協議して定めるものは、「放送同時配信等」からは除外され、今回の改正の対象とはならないことになる。

2)権利制限規定の拡充(44条, 93条など)

放送・有線放送に係る権利制限規定を拡充し、放送同時配信等についても著作物等を利用できることとすること。

今回の改正では、放送・有線放送では許諾が不要となっている権利制限規定を、放送同時配信等にも拡充している。
例えば、放送・有線放送事業者は、放送権・有線放送権を害することなく、放送・有線放送することができる著作物や実演、レコードなどを、放送・有線放送のためだけではなく、放送同時配信等のためにも一時的に録音・録画することができる(44条。102条により著作隣接権に準用)。
また、映像実演に係る権利者から放送の許諾を得た放送事業者は、契約に別段の定めがない限り、その実演を放送のために録音・録画することができるが、今回の改正により、放送同時配信等のためにも録音・録画することができることになる(93条)。
そのほか、学校教育番組の放送等(34条1項)などの権利制限規定も拡充されている。

3)許諾推定規定の創設(63条5項)

著作物等の放送等及び放送同時配信等について許諾することができる者が、特定放送事業者に対し、放送番組等における著作物等の利用の許諾を行った場合には、当該許諾に際して別段の意思表示をした場合を除き、当該許諾には放送同時配信等の許諾を含むものと推定することとすること。

放送番組には、多様かつ大量の著作物や実演などが利用されているため、放送や同時配信までの限られた時間内で、すべての権利者に詳細な利用条件等を説明し、明確な同時配信等の許諾を得るのは困難な場合もあることが指摘されていた。
そこで、許諾推定規定を創設し、著作隣接権の対象である実演などにも準用している(103条)。
この規定により、権利者が、特定放送事業者に対して放送番組等における著作物等の利用を許諾した場合には、別段の意思表示がない限り、放送同時配信等の許諾を含むものと推定されることになる。
権利者側が放送同時配信等を許諾していないことを証明した場合には推定を覆す、つまり、放送の許諾はあるが、放送同時配信等の許諾はしていないことになる。
ここで特定放送事業者とは、放送同時配信等を業として行い、文化庁長官の定める方法により、放送同時配信等が行われる放送番組の名称や時間帯その他の放送番組同時配信等の実施状況について文化庁長官の定める情報を公表している放送事業者のことを言う。

4)レコード・レコード実演の利用円滑化(94条の3, 96条の3)

放送事業者等が、集中管理等が行われていないレコード・レコード実演の放送同時配信等を行うことができることとするとともに、放送事業者等に対して補償金の支払いを求めることとすること。

現状、放送同時配信等については、芸団協CPRAや日本レコード協会による集中管理が行われている。
今回の改正では、このような集中管理が行われておらず、円滑に許諾が得られないおそれのあるレコード・レコード実演の放送同時配信等に係る権利を制限し、通常の使用料額に相当する補償金を支払うことによって、事前の許諾なく利用することができるようにしている。この補償金は、文化庁長官により指定された著作権等管理事業者がある場合には、当該管理事業者に支払うことになる。
この権利制限規定は、芸団協CPRAや日本レコード協会により集中管理されているレコード・レコード実演のほか、文化庁長官の定める方法により、権利者の氏名・名称、許諾申込を受付けるための連絡先など文化庁長官が定める情報が公表されているレコード・レコード実演も対象にならず、放送同時配信等について許諾が必要となる。

5)リピート放送の放送同時配信等に係る映像実演の利用円滑化
①集中管理等が行われていない映像実演の報酬請求権化(93条の3)

放送同時配信等に係る映像実演の権利者が放送事業者に対し、その実演の放送同時配信等の許諾を行ったときは、契約に別段の定めがない限り、当該許諾を得た実演について、当該許諾に係る放送同時配信等のほか、当該許諾を得た放送事業者が、リピート放送の放送同時配信等を行うことができることとするとともに、放送事業者等に対し放送同時配信に係る報酬の支払を求めることとすること。

放送事業者は、映像実演に係る権利者から放送の許諾を得た場合には、その実演を録音・録画することができ(93条1項)、事前の許諾なくリピート放送することができるが、報酬を支払わなければならない(93条の2)。
今回の改正は、放送同時配信等についても、このようなリピート放送と同様の取扱いとするものである。すなわち、初回放送の際に放送同時配信等について許諾を得た場合には、契約に別段の定めがない限り、リピート放送の放送同時配信等についても、通常の使用料額に相当する報酬を支払うことで、事前の許諾なく放送同時配信等することができることになる。
ただし、集中管理に関する規定がないリピート放送とは異なり、放送同時配信等に係る報酬は、文化庁長官により指定された著作権等管理事業者がある場合には、当該管理事業者に支払うことになる
また、著作権等管理事業者により集中管理されている映像実演のほか、文化庁長官が定める方法により、権利者の氏名・名称、許諾申込を受付けるための連絡先など文化庁長官が定める情報が公表されている映像実演も対象とはならず、リピート放送の放送同時配信等について許諾が必要となる。


②映像実演に係る不明権利者の補償金請求権化(94条)

放送事業者がリピート放送の放送同時配信等を行う場合に映像実演に係る権利者に連絡することができないときには、契約に別段の定めがない限り、その事情につき、文化庁長官が指定する著作権等管理事業者の確認を受け、かつ、当該著作権等管理事業者に補償金を支払うことにより、リピート放送の放送同時配信を行うことができることとすること。

放送事業者がリピート放送の放送同時配信等を行う際に、映像実演に係る権利者が不明である場合に、文化庁長官が指定する著作権等管理事業者の確認を受けたうえで、補償金を支払うことにより、リピート放送の放送同時配信等を行うことができるようにするものである。
放送事業者は、権利者が不明であるというために、
イ)連絡先を保有している場合には、当該連絡先に連絡すること、
ロ)著作権等管理事業者に対し照会すること、
ハ)連絡先等が公表されているか確認すること、
ニ)文化庁長官が定める方法により、放送同時配信等を予定している放送番組の名称、実演家の氏名その他文化庁長官が定める情報を公表すること
が必要となる。


6)その他(協議不調の場合の裁定制度の拡充(68条))
放送事業者が著作物を放送するための協議不調の場合における裁定制度を、放送同時配信等にも拡充するとともに、著作隣接権の対象となる実演やレコードなどにも準用した(103条)。

今後について

以上の改正は、令和4(2022)年1月1日から施行される。詳細は、文化庁長官の定めに委ねるところが多く、今後、規則や告示などを通じて内容が明らかになるところも多い。
また、報告書では、許諾推定規定の運用にあたり、関係者間でガイドラインを策定することが適当であるとしている。
しかも、施行後3 年を目途として、実施状況等を勘案し、検討を加え、必要な措置を講ずるとしている(附則8条1項)。
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化については、実演家の権利が不当に不利益を被ることがないよう、引き続き注視する必要がある。