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放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化について―文化審議会著作権分科会検討状況―

芸団協CPRA 法制広報部

テレビ放送番組のインターネット同時配信については、NHKが常時同時配信を開始し、一部の民放局においても試行的に行われている。また、見逃した放送番組を、放送終了後一定期間、オンデマンドで視聴できるサービスもユーザー数を増やしている。
このような中、文化庁では、放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に向けた議論を進め、昨年12月に中間まとめを行い、芸団協CPRAから意見を提出した。

これまでの検討状況

 昨年2月、著作権分科会「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」では、規制改革推進会議や総務省における議論等を踏まえた検討を行い、審議経過報告をとりまとめた。2020 年度早期から具体的な検討を進めるとして、まずは権利情報を集約したデータベースの拡充や集中管理の促進など、運用面の改善を着実に進め、それと並行して、いわゆるアウトサイダーへの対応など、運用面の改善では対応しきれないと考えられる課題の解決に資するような法整備を検討するとした。
 このような審議経過報告を踏まえ、今年度、著作権分科会に「基本政策小委員会」を設置するとともに、同小委員会に「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチーム」(以下「ワーキングチーム」)を設け、議論を進めた。
 また、規制改革推進会議「投資等ワーキング・グループ」においても、放送番組の同時配信等に係る権利処理の円滑化が取り上げられ、同会議が昨年7月にとりまとめた「規制改革推進に関する答申」に基づき閣議決定された「規制改革実施計画」(21ページ「(7)放送を巡る規制改革」を参照)では、円滑化のための施策についての実施時期や担当省庁も明記された。

ワーキングチームにおける議論

 総務省では、放送事業者からの要望事項を、昨年9月にとりまとめた。ワーキングチームでは、この要望事項のほか、著作権・著作隣接権関連団体への幅広いヒアリングも踏まえた検討を行った。
 芸団協CPRAからは椎名和夫運営委員がヒアリングに出席し、放送番組の同時配信等におけるレコード実演については、芸団協CPRAが集中管理を行っており、既に円滑な権利処理が実現しているため、制度的な手当ては不要である旨説明した。
 10月12日には「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(中間まとめ)」をとりまとめ、追っかけ配信および見逃し配信を含めた放送番組の同時配信「等」について、視聴者から見た利便性を第一としつつ、視聴者、放送事業者、実演家やレコード製作者を含むクリエイターの全てにとって利益となるような円滑化措置を迅速に講じていくことを基本方針として、制度改正により対応すべき事項と運用面での対応を進めるべき事項とに整理し、制度改正により対応すべき事項について優先的かつ集中的に検討を進めるとした。
 その後、ワーキングチームでは、放送事業者と実演・レコード権利者との意見交換も踏まえた検討が進められ、11月30日には、「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する制度改正等について(報告書)」をとりまとめた。報告書では、以下のような制度改正により対応すべき事項が掲げられている。

(1)現行権利制限規定の同時配信等への適用拡大
(2)借用素材を含む著作物及び映像実演に関して、放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化
(3)レコード・レコード実演(被アクセス困難者)の利用円滑化
(4)リピート放送の同時配信等における映像実演(被アクセス困難者)の利用円滑化

 (1)には、「第44条(放送のための一時的固定)」および「第93条(放送のための固定)」など、現在放送に適用される権利制限規定を同時配信等へ適用拡大する制度改正が含まれている。
 (2)は、借用素材や映像実演に関して、放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確であって、一定要件を満たす場合に、少なくとも同時配信についての許諾を推定する旨の規定を設けるというものである。ただし、今後具体的な適用条件についてルール作りを行うとしている。
 (3)は、同時配信等におけるレコード・レコード実演について、著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず、かつ、音楽分野の権利情報プラットフォーム上で適正な使用料で確実に許諾する旨の権利者の意思表示がされていないものについて、補償金請求権を付与した権利制限規定を設けるというものである。なお、海外権利者の取扱いや補償金スキームは別途検討するとしている。
 (4)は、同時配信等における映像実演の利用について、著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず、かつ、権利処理窓口が明らかではないものについて、補償金請求権を付与した権利制限規定を設けるとしている。なお、補償金スキームは別途検討するとしている。
 この報告書は、12月14日開催の「基本政策小委員会」に報告され、小委員会による「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ」としてとりまとめられ、パブリックコメントを実施し、芸団協CPRAからも意見を提出した。

今後の予定

 パブリックコメントや著作権分科会での議論を踏まえつつ、最終的に著作権分科会としての報告書がとりまとめられ、著作権制度改正が必要とされた事項については法改正が進められることになる。引き続き議論の動向を注視する必要がある。

芸団協CPRAが提出した意見書(全文)は、こちらからPDF版をご覧いただけます。

芸団協CPRAが提出した意見書(概要)

1.基本方針について
○通信と放送の融合に対応するためには、放送番組の同時配信等に限定した議論を行うだけでは不十分であり、ウェブキャスティングも含めた、国際条約上の「公衆への伝達」に係る全体的な権利の見直しを行うべき。
○現在の集中管理を含む権利処理の運用実務において、放送番組の同時配信等に係る権利処理は支障なく行われており、制度改正を根拠付ける立法事実の有無を十分に検証した上で、制度改正の是非について議論すべき。

2.著作権制度の改正により対応すべき事項について
(1)対象とするサービスの範囲について
○WPPT15条に定める「公衆への伝達」として報酬請求権が適用される同時配信と、WPPT10条や14条に定める「利用可能化」として排他的権利が適用されるオンデマンド配信(「追っかけ配信」及び「見逃し配信」)とは異なる利用態様であり、明確に区別すべき。
○とりわけ「利用可能化」に係る権利制限については、関連条約との整合性について十分に検討することが必要。
○放送に類似した利用である同時配信と、「追っかけ配信」や「見逃し配信」といったオンデマンド配信とは、ビジネス戦略によって使い分ける場合もあり得ることから、一律に取り扱うべきではない。

(2)現行権利制限規定の同時配信等への適用拡大
○レコード実演について、芸団協CPRAにおいて、著作権等管理事業法に基づく集中管理がなされており、特段の支障は生じていない。「第44条(放送のための一時固定)」の適用範囲の拡大については、その必要性も含め、慎重に検討すべき。仮に、同時配信等にまで拡大しようとする場合であっても、既存の集中管理の実務に影響が及ばないよう十分に配慮すべき。

(3)借用素材を含む著作物及び映像実演に関して、放送の利用許諾を得た際に同時配信等の可否が不明確である場合の利用円滑化(許諾推定規定の導入)
○映像実演における放送の許諾は、別段の定めのない限り、出演した放送波の利用だけに限定されるものとして運用されており、許諾推定規定の導入は、このような放送出演に関する確立した業界ルールとの関係で混乱が生じる恐れがある。
○制度改正をしなくとも、放送番組出演の際に、実演家に同時配信等の可否について確認すれば足りるのではないか。
○強行規定とされる著作権法63条4項(放送の許諾は、録音録画の許諾を含まない)が規定された趣旨に鑑みても、このような許諾推定規定の導入は権利保護の観点及び法的整合性からも疑問。

(4)レコード・レコード実演(被アクセス困難者)の利用円滑化
○権利処理円滑化の観点から、著作権等集中管理団体のカバー率が高まることは望ましいものの、著作権等管理事業法は、あくまで権利者からの任意の委任に基づく集中管理を前提としているため、権利者自らの意思による権利行使は尊重されることが必要。
○集中管理されていない多くは外国権利者であるところ、被アクセス困難者に対する権利制限の内容如何では、外国権利者を日本国内の権利者よりも不利に取り扱うおそれがあり、国際条約が定める内国民待遇との関係にも十分に留意することが必要。
○補償金スキームを導入する場合には、文化庁長官の指定する団体が一元的な窓口を担うことが望ましいとしているが、そもそも被アクセス困難者がどの程度存在するのか、一元的な窓口を担う団体にどのような業務を求めるのか、団体の業務遂行に係る費用をどのように賄うのか、補償金を取扱う団体としてどのような団体を指定することが適切であるか等、総合的な観点から実行可能性を見据えた議論を進めるべき。

(5)リピート放送の同時配信等における映像実演(被アクセス困難者)の利用円滑化
○主に円滑に許諾を得ることができない所在不明者を被アクセス困難者として、権利制限した上で補償金請求権を与えることが検討されているが、所在不明者の権利処理については裁定制度による利用円滑化を図るべき。
○現状、リピート放送に係る報酬については集中管理されておらず、必ずしも実演家に対して適切な対価が支払われているかは確かではない。リピート放送の被アクセス困難者に係る同時配信等に係る許諾を不要として、補償金を付与する場合には、リピート放送に係る報酬もあわせて、実演家に対して適切な対価が支払われるよう検討することが必要。