CPRA news

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誌面で振り返るCPRA news100号のあゆみ

芸団協CPRA 法制広報委員会編集部会

20世紀最後の年に創刊されたCPRA newsは、今号をもって100号を迎えた。
CPRA newsのこれまでのあゆみを誌面で振り返ってみたい。
なお文中の肩書は、CPRA news誌面掲載時のものである。

CPRAの活動を正確に

1999年度の広報部会設置を契機に、芸団協CPRAの本格的な広報活動が開始された。その成果の一つが、2000年7月に第1号が創刊された『CPRA news』だ。
創刊特別号の巻頭メッセージは、棚野正士運営委員会委員長による『実演家著作隣接権センター(CPRA)は、実演家の権利を守るために、時代が生んだ21世紀への大きな波です』。
そこでは「CPRAを世界に発信し、日本の芸能文化と権利管理システムの両方を輸出したいものです」との決意が述べられている。
そして、顧問会議メンバーからのメッセージのほか、運営委員会に設けられた8つの部会の業務担当や徴収分配の仕組みについて紹介している。

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CPRA news は芸団協CPRAの機関誌なので、その活動を正確に伝えるのは重要なミッションの一つである。
そのため、2年に1度の役員が刷新されるタイミングで運営体制と各委員会の取り組みを紹介している。また毎年事業計画と事業報告を掲載するほか、適宜徴収分配に関するニュースも発信している。

2013年は、芸団協CPRA設立20周年を迎えた年であった。
70号(2013年11月)巻頭メッセージにおいて、崎元讓運営委員会委員長は「私がCPRAの運営にかかわった初期のころと比べて周りの実演家の著作隣接権の意識は非常に高くなっています。仕事の現場でも演奏家の会話でも話題になることが増えています。このような状況をふまえて、今後とも関係諸団体と、一層の協力関係を深めてコンテンツ業界の益々の繁栄を図ることが重要です」と指摘している。

この節目にあたり、CPRA newsでは芸団協CPRAの歩みをその業務ごとに振り返っている。
同号では、上野博運営委員会副委員長(二次使用料/貸レコード担当)による『徴収業務から振り返る芸団協CPRAの20年の歩み』を掲載している。
そこでは、商業用レコード二次使用料等徴収額が20年で約7倍まで増加したのは、「使用する楽曲は、楽曲名ではなく、それを演奏したり、歌唱したりするアーティストで選ぶことが多いのだから、レコード実演の価値は音楽著作物の価値と同等である、という考えの下、粘り強く徴収先と交渉してきた成果」と評価している。
また、1,000を超える放送局の実態を把握し、二次使用料等を支払う必要がある旨を周知徹底することは「受け取る使用料等の額から見ると、決して『割のいい仕事』ではない。しかしながら、実演家に二次使用料を支払うという、著作権法上規定された制度を実効性のあるものたらしめるためには、文化庁長官から実演家の二次使用料を受け取る団体として唯一指定された芸団協としては、あまねく利用者から徴収するよう努力し続けることが責務である」としている。

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71号(2014年2月)は、椎名和夫運営委員(音楽関連分配/データセンター担当)による『分配業務から振り返る芸団協CPRAの20年の歩み』。
そこでは、芸団協会員団体への分配から個々の実演家・権利者への分配へ、権利者の委任取得やシステム開発の努力を重ねつつ、分配の精緻化を図ってきた芸団協CPRAの歴史を紐解いている。
そして、「今後、実演家の権利が拡大する中で、分配業務もますます複雑になることが予想される。『権利者への最大の分配』を目標に、関係する権利者団体と共に適正且つ合理的な分配を目指していきたい」と結んでいる。

72号(2014年5月)は、安部次郎運営委員(総務/海外徴収分配担当)による『海外徴収・分配業務から振り返る芸団協CPRAの歩み』。
そこでは、海外からの徴収額は、海外への分配額にまだまだ遠く及ばないのが現状としつつ、欧米に比して日本の音楽市場規模が非常に大きいと考えられるアジア地域の実態把握につとめ、SCAPR(実演家権利管理団体協議会)とも連携を取りながら、芸団協CPRAがアジア各国における著作隣接権の権利管理システムの確立に関する支援活動の先陣を切っていけるような体制づくりが必要と指摘している。

73号(2014年8月)では、芸団協CPRA創設20周年特集の締めくくりとして、松武秀樹運営委員(広報担当)が『広報から見る芸団協CPRA20年の歩み』を執筆した。
これまでの広報活動で芸団協CPRAの名前が関係者にだいぶ浸透したと評価する一方で、今後の課題として、一般ユーザーが実演を利用し、自ら実演を行う時代においては、広く一般に向けて実演の価値や実演家を保護する必要性を訴えていく必要がある、としている。

なおこれらの記事は、後に刊行された『CPRA20年―実演家著作隣接権センターの歩み―』(2016年6月)の作成にも活かされている。

実演家の権利を守り、拡充していくために

実演家の権利の集中管理団体である芸団協CPRAの機関誌として、実演家の権利の適切な保護や拡充を訴えるのもCPRA news の大切な役割である。

CPRA news がこれまで一番多く取り上げたトピックは、「私的録音録画補償金制度」である。
芸団協CPRAは、CPRA newsを通じて私的録音録画の実態に合った権利者への適切な対価の還元を訴え続けてきた。特に、地上デジタル放送への完全移行を目前に控え、録画機器の録画回数の緩和(ダビング10)やブルーレイディスク等の政令指定などを巡り権利者側とメーカー側の対立が先鋭化し、ついにはSARVH・東芝訴訟へ至る2008年から2011年にかけては、ほぼ毎号この問題を取り上げている。

当時、芸団協CPRAは同制度に関連して「Creators to Consumers :はじめの一歩・音楽の絆」という普及啓発活動や、JASRAC、日本レコード協会等とともに「Culture First~はじめに文化ありき~」という運動を行っており、CPRA newsではこれらのイベントや記者会見も詳しく取り上げている。

Culture First発足直後に発行された43号(2008年3月)では、岸博幸慶応義塾大学大学院教授による巻頭言『Culture Firstを国民運動に!』に続き、CISAC事務局長のエリック・バティスト氏へのCulture Firstに関するインタビュー記事を掲載している。
国際的に長年の懸案事項だったのが、その検討から採択に至るまで20年近くの歳月が費やされた「視聴覚的実演に関するWIPO北京条約」である。2000年12 月に開催された外交会議では、20ヶ条のうち、19ヶ条について暫定合意したものの、アメリカとヨーロッパとの間で権利移転をめぐる条項について合意できず、条約の採択には至らなかった。

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6号(2001年1月)では、この外交会議の様子をドキュメンタリー調で綴っている。
それから10年が過ぎた60号(2011年7月)では、アメリカ国内における映画製作者と実演家との議論の進展を受けて、外交会議再開の機運を伝えている。

2012年6月、北京条約が無事採択されると、65号(2012年8月)はCPRA news史上初めて増頁をし、外交会議の現地リポートや条約の説明、仮訳を掲載した。
巻頭言は、棚野正士芸団協常務理事・著作隣接権総合研究所所長による『歴史的条約、俳優の権利のドアを開く』。そこでは、「世界の俳優組織はローマ条約から50 年かかって新条約をつくり俳優の権利のドアを開いた。... "歴史的条約"... を受けて、わたくしたちは次の世代のために国内秩序を形成していかなくてはならない。国内法だけでなく、実態をも整備しなければならない。次の50年のために」と次の目標を掲げている。
続く66号(2012年12月)では芸団協CPRAが主催した北京条約作成記念国際シンポジウムの様子を詳しく伝えている。

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芸団協CPRAは近年、いわゆる「レコード演奏権」の創設ウェブキャスティングにおける衡平な報酬の確保など、公衆への伝達に係る権利の見直しに関する運動を展開している。
CPRA news では、その主張を補強し、日本に適した制度を考えてもらうため、諸外国の法制度や実態を度々紹介してきた。
ウェブキャスティングについては、68 号(2013年5月)では、ヨーロッパの法制度と現状を紹介し、93号(2019年7月)では、アメリカの法制度について、安藤和宏東洋大学教授にインタビューしている。
安藤教授は、「アメリカや欧州はインターネット放送について、実演家とレコード製作者の分配比率は『50 : 50』です。また、日本の放送二次使用料では、実演家とレコード製作者間で『50 : 50』が実現されています。したがって、放送類似サービスのインターネット放送も『50: 50』が当然実現されるべきです」と指摘している。
なお、同号の巻頭言は、中井秀範法制広報委員会委員長による『実演家にレコード演奏権・伝達権を』。そこでは、「国際条約では『公衆への伝達』というくくりで報酬請求権が与えられているレコード演奏・伝達とインターネット放送に関わる我が国の著作権制度は、一方では世界的潮流に逆らって権利を認めず、その一方で諸外国には比して大変強い許諾権を認めているという、非常にバランスの悪いものと言わざるを得ません。知財立国の旗を掲げる以上、我が国も、ガラパゴス化を脱し、一刻も早く、諸外国並みの制度の改正が必要であると考えます」と強く主張している。

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また、レコード演奏権については、幅広い報酬請求権を認めている韓国の法制度や判例を80号(2016年5月)及び89号(2018年7月)で、ヨーロッパの事例について98号(2021年1月)で取り上げている。
94号(2019年10月)では少し切り口を変えてBGMがビジネスに与える効果について、消費者行動論の観点から考察している。

CPRA newsは、著作権に関する海外の動きをいち早く紹介してきた。
81号(2016年8月)では拡大集中許諾について、北欧の実演家権利管理団体にアンケートをして、その詳細を伝えている。
YouTubeのようなユーザー・アップロード型ストリーミングサービスが音楽から得ている収益と音楽業界、すなわち権利者に還元される収益とが不均衡であるという、いわゆる「バリュー・ギャップ」問題を巡る欧米の動向については、最初に83号(2017年1月)で紹介し、その後この問題等に対処するためのEU指令の採択まで、87号(2018年1月)及び93号(2019年7月)と続報している。その他、実演家に関連の深い関係省庁審議会報告や法改正についてもわかりやすい解説を載せている。

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技術の進展や業界動向をわかりやすく

芸団協CPRAの徴収額の大半を占める商業用レコード二次使用料がレコードの登場により生演奏の機会を失った実演家への補償の考えから生まれたように、実演家の権利と技術の発達は切っても切り離せない関係だ。そのためCPRA newsは創刊当初から技術の進展に常に目を光らせ、最新の動向を紹介してきた。
例えば14号(2002年2月)から3号にわたり「デジタル多メディア時代における産業界とコンテンツ」と銘打った特集が組まれた。14号ではCDの売上減少と携帯電話への支出との相関関係やモバイル・コンテンツ・マーケットの展望について、15号(2002年4月)では通信・放送の融合と著作権について、それぞれ関係省庁担当者等を招いて座談会を催している。

特集の最後を締めくくる16号(2002年6月)では、松武秀樹日本シンセサイザー・プログラマー協会会長が、ニューヨーク在住の坂本龍一氏と電話会談デジタル多メディア時代におけるコンテンツ制作について語り合った。
その後も着メロ、着うた、ダウンロード、ストリーミングと、その時々の音楽配信マーケットや、4 K 放送、IPサイマルラジオなど放送最新技術も取材している。

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最新技術を単に紹介するだけでなく、実演家の権利に与える影響についても掘り下げている。
67号(2013年2月)では、インターネットの普及やデジタル技術の進展など音楽を巡る環境の変化が実演家に与えた影響について、大石征裕日本音楽制作者連盟理事長にインタビューしている。
その中で大石理事長は、「音楽CDにせよ、配信にせよ、生の演奏があるからこそ存在するのであって、いくら技術が進んでも、その事実はエジソンが蓄音機を発明したときから、さらに言えば『固定』と言うと譜面を指した時代から変わっていないと思います。むしろ技術が進み、録音した音楽が簡単に手に入る今だからこそ、『好きなアーティストがそこにいる』というリアリティ、臨場感が得られるライブが注目されるのではないでしょうか」と指摘している。

68号(2013年5月)の映像を巡る環境の変化が実演家に与えた影響についてのインタビュー記事では、半田正夫青山学院大学名誉教授が、日本の現行著作権法は北京条約の条文に反した規定があるわけではないとしつつも、その条約の趣旨を踏まえて、せめて俳優に対しても音の実演と同等の保護を認めるべきであり、北京条約ができた今は立法化に結び付けるチャンスだから、実演家は積極的に行動を起こすべきだ、と奮起を促している。

また77号(2015年8月)から80号(2016年5月)にかけて放送の歴史を紐解き、節目節目での実演家の権利に関する議論を振り返った。

95号(2020年1月)及び96号(2020年4月)では「テクノロジー×実演」をテーマに、歌声合成技術や映像技術の発展が実演家の権利に与える影響について、顧問弁護士の藤原浩氏に見解を聞いている。
藤原弁護士は95号で、AI技術によって生まれた新しい歌声など「これまでの既成概念では解決できない多くの問題があり、新時代における実演家の保護について、これから議論しなければならないと思います」と問題提起をしている。

また、96 号ではディープフェイク作成に関し、現在の法体系の下でも十分に対応が可能であろうとしつつ、「元来技術とはニュートラルなものです。一部の悪い事例を捉えて、技術全体をつぶすことがあってはならないのではないでしょうか」と警鐘を鳴らしている。技術動向だけでなく、業界動向にも目を配っている。

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98号(2021年1月)ではコロナ禍で激変したライブエンタメ市場とテレビ・動画コンテンツの視聴動向を、99号(2021年4月)ではSNSやUGCからヒット曲が生まれる昨今の音楽シーンについて、取り上げている。
98号では、野村達矢日本音楽制作者連盟理事長が、コロナ禍で台頭したオンラインライブは、リアルライブに比べ収益の確保が難しい点を指摘しつつも、「それでも、オンラインライブをやる意義はあります。それは、『業界を守るため』。ライブを実施しない決断はできますが、それではステージを支えてくれるスタッフや関係者を守ることができません。どんなに経済的リスクがつきまとっても、やらないという選択肢ではなく業界の経済活動のためにもやるという選択肢をとるという考えです」と述べている。
また、新しい映像表現や空間を提供することで、リアルでは体験できない方向へオンラインライブが発展する可能性を指摘するとともに、国境を越えて視聴されるオンラインライブは国内だけでなく海外にも目を向けるきっかけとなったと、オンラインライブに対し肯定的な評価をしている。

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CPRA newsのこれから

以上、駆け足でCPRA news 100号の歴史を振り返ってきたが、その時々で注目されるテーマは変われども、常に実演家の立場から幅広い問題を扱ってきたことに改めて気づかされた。
これまでご寄稿いただいた方々、インタビューさせていただいた方々にこの場を借りて改めて御礼申し上げたい。
CPRA news創刊から1年が経過した11号(2001年7月)の編集後記によれば、当初想定していたテーマは次の通りであったという。

・CPRA(実演家著作隣接権センター)の名称、呼称の徹底した広報。
・特集ページで、実演家が直面している権利問題を浮き彫りにできるか。
・国内外の実演家にまつわる話題、ニュースをいかに迅速に集められるか。
・CPRAのあらゆる活動をどのくらい正確に伝えられるか。
・CPRAをとりまく団体や企業の情報を集め、そのネットワークを紹介したい。


100号に至るまで、このテーマを胸に編纂をしてきたつもりだが、読者にはどう映ってきたのだろうか。
今後は即時性、双方向性に優れたウェブサイトでの発信を優先することとし、紙媒体には、その中から
①じっくり読み、考えてほしいもの、
②記録として残すべきもの、
③関係者間で情報共有すべきもの、関心が高いもの
を掲載する予定である。

今後は、ウェブサイトと紙媒体をCPRA newsの両輪と位置づけ、「実演家の権利や実演家を取り巻く環境について専門に取り扱う国内唯一の媒体」の誇りを持って、引き続き有益な情報を読者に届けていきたい。