生成AIにまつわる近時の動向 どうなる2026年
芸団協CPRA 法制広報部
昨年も、様々な生成AIが登場し、新たなビジネスが生まれ、制度的な対応も進められた。 そこで、新聞記事やネットニュースなどから、2025年の生成AIに関する動向をまとめるとともに、2026年について展望してみたい。
2025年も様々な生成AIが登場
春頃、ChatGPTを使って、写真から「ジブリ風」の画像を生成することが、SNS上で話題となった。ChatGPTは、2022年に公開されたものであるが、公開から3年が経過した2025年11月には、1週間当たりの利用者が8億人を超えたとの報道もなされている※1。日常においても、AIが浸透しつつあると言えるだろう。
音楽分野でいえば、2024年に続いて、「Suno AI」や「Udio」といった音楽生成AIが更なる進化を遂げ、人間の創作した曲と違いが分からないような楽曲生成が可能になったことに加え、生成した楽曲を一部編集する機能なども追加された。
また、映像分野では、9月にChatGPTを開発したアメリカのOpenAI社が、動画生成AIアプリ「Sora2」を公開。「Sora2」は、2024年2月に公開された以前のバージョンに比べ、自然な音声や背景音楽がつき、複雑なシーンの切り替わりに対応するなど、精度が格段に向上したことから話題となった※2。
さらには、Google社も、「Sora2」に対抗するように「Veo3/3.1」を公開。音声や音楽を映像とともに生成できることはもちろん、映像作品の製作に用いることを想定した編集ツールなどとも連携することで、いよいよ動画生成AIがコンテンツ制作に本格的に活用される時代の到来を予感させた※3。
生成AIを巡る諸問題
2025年も、生成AIについて様々な懸念などが表明された年であった。
イギリスでは、適法にアクセスできる著作物について、非営利の調査を目的とするテキスト・データ・マイニング(情報解析)の場合には、権利制限の対象としているところ(CDPA第29条A)、生成AIの学習に著作物を利用しやすくしようとする著作権法改正の議論が進められていた。これに対して、およそ1,000人のミュージシャンがメロディーや歌詞のない無音アルバム「Is This What We Want?」を、2月に公開したことが報道された※4。このアルバムに収録された曲名をつなげると、「The British Government Must Not Legalise Music Theft To Benefit AI Companies(英国政府は、AI企業のもうけのために音楽の盗用を適法化してはならない)」となり、政府における議論に対して抗議している。
日本でも、生成AIに対して、様々な懸念などが示された。
例えば、6月には日本新聞協会が「生成AI(人工知能)における報道コンテンツの保護に関する声明」を発した※5ほか、10月には出版社などが生成AI時代の創作と権利のあり方に関する共同声明を発したり※6、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)がOpenAI社に対してSora2」の運用に関する要望書を提出したりした。また、11月には、日本民間放送連盟(民放連)が、生成AIの開発・学習に関する声明を発している※7。さらに芸団協CPRAも参加する「AIに関する音楽団体協議会」が、12月にクリエイターやアーティストの権利保護とAIの適切な利活用に関する意見を表明している※8。
また、著作権の問題にとどまらず、生成AIによって、性的ディープフェイクなどが出回ることで人格的な権利が侵害される懸念もある。例えば、日本でも、6月に生成AIで作成したわいせつ画像をプリントした抱き枕カバーを違法に転売したとして、書類送検されたという事件が報道されている※9。
制度的な対応
EUでは、2024年にAI法が成立し、2025年2月から一部の規定が施行された。日本でも、6月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI基本法)が成立している。しかしながら、AI基本法は、EUのAI法とは異なり、AIを規制し、罰則規定を設けるものではなく、国や政府などの政策の基本方針を定めたものだ。このAI基本法に基づき、9月には「人工知能戦略本部」(本部長:内閣総理大臣)が設置され、12月には、はじめての「人工
知能基本計画」が閣議決定されている。
AI基本法の成立に当たっては、附帯決議がなされており、「AIの利用に伴う知的財産権、パブリシティ権等の権利侵害に対応するため、諸外国における検討状況等を踏まえ、必要に応じ関連法制の整備を含めた対応の在り方について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。その際、特に権利者の権利が適切に保護されるよう十分考慮すること」とされている※10。
また、「人工知能基本計画」においても「適切な知的財産の保護と利活用につながる透明性の確保を図るとともに、コンテンツホルダーへの対価還元等の推進や、生成AIによる知的財産権侵害対策に関する相談体制の整備、生成AIと知的財産権に関する分かりや
すい情報提供等の取組を進める。」としている※11。
生成AIと著作権
生成AIと著作権を巡っては、生成AIの学習段階における著作権侵害や、生成AIによる生成物の著作物性が問題となっている。
前者の問題については、アメリカをはじめ、ドイツやイギリスにおいて、生成AI開発事業者を訴えたケースがいくつか報道されている。例えば、アメリカでは、2月に、フェアユースの成立を認めなかった判決※12が出された一方、6月にはフェアユースの成立を認めた判決※13も出されている。
また、11月には、イギリスで、広告や報道のために画像を提供する企業が、画像生成AIを運営する企業に対して起こした訴訟において、著作権侵害を認めないとする判決が出されたとの報道もなされている※14。
さらに、ドイツの音楽著作権管理団体GEMAが、アメリカのOpenAI社に対して、差止請求や損害賠償などを求めた事件では、11月にGEMAの主張を認める判決が下されている※15。日本においても、8月に、大手新聞社が、生成AIを用いた検索サービスを提供するアメリカの企業に対して損害賠償などを求める訴訟を提起しており、その動向が注目されよう。
また、後者の問題については、11月に千葉県警が生成AIで作成された画像を書籍の表紙に無断で複製したとして、著作権法違反の疑いで書類送検したとの報道がなされている※16。生成AIによって生成された画像について著作権があるとして、摘発されたはじめての事例となる。
AIの利活用や適正化に向けた動き
生成AIを巡っては、適正に生成AIが使われるようにするための取り組みや、取引ルールの整備、新たな創作活動に活かそうとする動きもあった。
11月には、日本俳優連合が、声優らの声の不正利用対策として、商社と組み音声データベースを開発することを発表している※17。
また、アメリカでは、2024年6月に三大メジャーレーベルが、AI学習のために著作権を侵害されたとして、音楽生成AI「Suno」や「Udio」に対して損害賠償などを求めて訴えを提起していたが、ワーナー・ミュージックは、11月には「Suno」や「Udio」との間で和解し、パートナーシップを締結したと発表した※18。
さらに、12月には、ディズニーが、OpenAI社と提携し、「Sora」上で、ディズニーのキャラクターを自由に使えるようにすると発表したとの報道もなされている※19。
AIの利活用については、文化庁が、AIを活用してインターネット上の海賊版サイトを自動検知するシステムを実用化するための補正予算を計上するといった動きも見られた※20。
また、創作活動におけるAIの利活用については、松任谷由実さんが、荒井由実時代から松任谷由実時代までの声をAIに学習させたAIボーカルによるアルバムを発表するなどの報道もあった※21。さらに、番組コーナーの企画書案作りを支援する生成AIを開発し、試験運用が開始されたとの報道もあった※22。
結びに代えて
2025年の生成AIを巡っては、著作権侵害をはじめ、創作活動の場が奪われるなどの懸念がある一方で、適正な利用に向けた動きも見られたところであった。では、2026年、生成AIはどのような展望を迎えるのか、当の本人であるAIに聞いてみた。
"2026年は生成AIがさらに身近になる一方で、より実践的で戦略的な活用が求められる転換期と言えるでしょう"
とのことだ※23。これが「精度の高い未来予想」か、「高度なハルシネーション」となるのか、2026年を通じて、しっかりと注視していきたい。
【注】
※1 読売新聞2025年11月29日付け9面「チャットGPT利用急増−公開3年著作権など課題も」 (▲戻る)
※2 朝日新聞2025年10月4日付け2面「脅威AI海賊版−自衛迫られるコンテンツ業界」 (▲戻る)
※3 読売新聞2025年4月11日付け7面「グーグル音楽生成AI提供開始−動画や音声4種一括利用可」 (▲戻る)
※4 東京新聞2025年2月26日付け夕刊6面「AIが著作権侵害の恐れ−英歌手1000人抗議の『無音アルバム』」 (▲戻る)
※5 日本新聞協会ウェブサイト(https://www.pressnet.or.jp/news/headline/250604_15902.html) (▲戻る)
※6 講談社ウェブサイト(https://www.kodansha.co.jp/notices/672) (▲戻る)
※7 日本民間放送連盟(民放連)ウェブサイト(https://www.j-ba.or.jp/category/topics/jba106724) (▲戻る)
※8 日本音楽著作権協会(JASRAC)ウェブサイト(https://www.jasrac.or.jp/information/release/25/251217.html)ほか (▲戻る)
※9 読売新聞2025年6月5日付け23面「枕カバーにAIわいせつ画−警視庁転売疑
い男を書類送検」 (▲戻る)
※10 令和7年5月27日参議院内閣委員会。衆議院でも同旨の附帯決議がなされて
いる (▲戻る)
※11 「 人工知能基本計画〜『信頼できるAI』による『日本再起』」13頁 (▲戻る)
※12 詳しくは、丸田憲和「Thomson Reuters v. Ross intelligence判決速報−競
合するAIサービス開発の利用でフェアユース認められず」コピ768号41頁(2025) (▲戻る)
※13 詳しくは、奥邨弘司「生成AIの機械学習とフェアユース−米国アンソロピッ
ク事件地裁判決」コピ774号49頁以下(2025) (▲戻る)
※14 朝日新聞2025年11月6日付け9面「ゲッティ、生成AI社に敗訴、英判決『二
次的侵害』認められず」 (▲戻る)
※15 GEMA Press Release 2025.11.11(https://www.gema.de/en/w/landmark
-ruling-gema-against-openai) (▲戻る)
※16 読売新聞2025年11月20日付け30面「千葉県警『AI生成画は著作物』複製疑い男書類送検へ」 (▲戻る)
※17 日本俳優連合ウェブサイト(https://www.nippairen.com/jaunews/jvoxpro.html) (▲戻る)
※18 Warner Music Press Release 2025.11.25(https://www.wmg.com/news
/warner-music-group-and-suno-forge-groundbreaking-partnership) (▲戻る)
※19 朝日新聞2025年12月13日付け3面「ディズニー一転、AIと提携−動画生成『ソラ』キャラ活用容認」 また、Walt Disney Company Press Release
2025.12.11(https://thewaltdisneycompany.com/press-releases/the-walt-disney-company-and-openai-reach-landmark-agreement-to-bring-beloved-characters-from-across-disneys-brands-to-sora/) (▲戻る)
※20 読売新聞2025年11月29日付け夕刊1面「マンガ海賊版 AIで検知−被害1
か月7000億円、出版社の負担軽減」 (▲戻る)
※21 朝日新聞2025年11月17日付け1面「AI ユーミンの挑戦−歌声合成し曲制
作『新たなページ開いた』」 (▲戻る)
※22 東京新聞2025年9月14日付け11面「日テレ開発『ZIP !』内で試験運用−
生成AI番組づくり手伝う」 (▲戻る)
※23 Google社のAI"Gemini"の回答 (▲戻る)



