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著作隣接権における「公衆への伝達」権の実現へ −「レコード演奏権」への国際的対応

弁護士 龍村 全

 レコードの「公衆への伝達」権の保護は、歴史的に見ると、1961年のローマ条約が「レコード又はその複製物が放送または『公衆への伝達』に直接使用される場合には、単一の衡平な報酬が、使用者により実演家若しくはレコード製作者またはその双方に支払われる」べきことを規定したことから始まり、その後、1996年の「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」が、「実演家およびレコード製作者は、...レコードを放送又は『公衆への伝達』のために、直接又は間接に利用することについて、単一の衡平な報酬を請求する権利を享有する。」と定め、さらに、欧州においてはEU貸与権指令がこの「公衆への伝達」権の留保を認めず、加盟国にその保護を義務づけるなどとした国際的な制度の確立により世界的に普及した。全EU加盟国がそれを導入したほか、現在、150内外の国々において「公衆への伝達」権が認められている状況にある。

 ところが、ローマ条約やWPPTが留保条項を設けていたため、わが国は留保宣言を行い、以来その状況が長く続いている。わが国では、著作権についても、旧法下では適法録音されたレコード再生について著作権を制限し、現行著作権法への改正時にも附則14 条としてそれを承継し、それが平成11年著作権法改正により廃止されるまで、その状況が長く続いていた。その上、著作隣接権の分野では、ローマ条約の成立より58年、WPPTの締結より23 年が経過した計算になるが、なおわが国では、実演家・レコード製作者に「公衆への伝達」権が認められていないままなのである。わが国における音楽の利用実態は決して諸外国に遅れを取るものではないが、制度面においては、国際的には後進の状況にあるといわざるをえない。

 現在の音楽市場は国際的な広がりを持ち、実演家は世界の市場でビジネスを行っている。欧州各国で伝達されたわが国の音楽は、その対価の徴収は可能ではあるが、わが国が保護を認めていないがため、相互主義の建前上、徴収も行われないという不可解な悪循環が進行しているわけである。クリエーターへの適正な対価の還元が議論されて久しいが、基本的な制度の問題として、この点が漏れているのは解せないところである。

 そういった中、本年2月、「レコードの利用についての保護に関する国際的な基準の重要性に十分な考慮を払いつつ、公衆に対するあらゆる伝達のためのレコードの利用についての十分な保護に関し引き続き討議する」とされた日EU経済連携協定が発効した。本年の「知的財産推進計画2019」において、同時配信等に係る著作隣接権の取扱いなど制度改正を含めた権利処理の円滑化について、制度の在り方について具体的な検討作業を開始し、必要に応じた見直しを行うとされたのも、上記のような論点も視野に入れ、ウェブキャスティングの問題一般に関わる「公衆への伝達」権の問題も含め、検討や見直しが必要とされたものと理解される。これを受けて、文化審議会著作権分科会においても、国際的動向を踏まえた「公衆への伝達」権の在り方を含めた議論が必要になって来よう。