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著作権分科会報告書について

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文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会で検討され、法改正の方向性が決まった事項について報告書案がまとめられ、2月13日、著作権分科会において了承された。著作権分科会報告書の概要を紹介する。

リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応(※1)

 自身のウェブサイトにはコンテンツを掲載せず、他のウェブサイトに掲載された著作権侵害コンテンツへのリンク情報等を提供して、利用者を侵害コンテンツへ誘導するためのウェブサイト(いわゆるリーチサイト)等は、侵害コンテンツへのアクセスを容易にし、著作権侵害を助長している。このような行為は、インターネット上の海賊版被害が深刻化している一因と考えられることから、2016年度よりこの問題への対応方策が検討されてきた。

 リンク情報の提供行為という表現行為の自由を制約するにあたっては、規制対象をはっきりさせる必要があるが、適法、違法の境界を明確に定めるのは難しいため、被害状況を踏まえ差し当たり緊急性の高い悪質な行為類型のみ対応を検討することとした。

 検討の結果、一定の要件に当てはまる行為をみなし侵害とする規定を置き、差止請求及び刑事罰の対象とすることが適当とした。具体的には、社会通念上いわゆる「リーチサイト」、「リーチアプリ」として認知されているような、類型的に侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性の高い「場・手段」を通じた侵害コンテンツに係るリンク情報等を提供する行為に限定するとともに、侵害コンテンツであることへの認識に関し一定の主観要件(侵害コンテンツであることについて故意・過失が認められる場合)を課すことが適当とした。ただし、過失による行為については刑事罰の対象から除外することが適当とした。

 また、リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為については、個々の著作権侵害コンテンツに係るリンク情報等を提供する行為よりも違法行為を助長する度合いが大きく、著作権者により深刻な不利益を及ぼしていることから、別途罰則の対象とすべきとした。

 消費者が侵害コンテンツにアクセスする経路としては、リーチサイト等を直接訪問する方法の他、インターネット情報検索サービスを経由するものが一定割合存在している。インターネット情報検索サービスそのものは中立的な目的で提供されているものの、利用者が特定の著作物のタイトルや海賊版に関連するキーワードを入力することで侵害コンテンツのリンク情報が簡単に取得できる手段として機能しており、侵害コンテンツの拡散に相当程度寄与していると認められる。そのため実効的な防止策を取ることが必要だが、関係者の意向を踏まえ、まずは権利者団体及びサービス事業者間で協議の場を設け、当事者間の取組による運用上の解決を図ることとし、必要に応じて法整備を検討することとした。

ダウンロード違法化の対象範囲の見直し

 著作権侵害コンテンツの私的使用目的でのダウンロードについては、2009年の法改正で、特に被害が顕在化、深刻化していた音楽・映画の分野に限って違法化(民事措置)され、そのうち有償で提供・提示されたものに限って2012 年の法改正で刑事罰化された。今般、巨大海賊版サイトの登場による電子コミック市場売上の激減等インターネット上の著作権侵害が深刻化したことを受けて、対象範囲の見直しが行われた。

 検討の結果、少なくとも民事については対象範囲を著作物全般に拡大していくことが有力な選択肢となるとした。ただし、スマートフォンのスクリーンショット等広く一般に行われており、国民生活への影響が大きいため、複数の委員から出された、「被害実態が明らかな海賊版対策に必要な範囲に限って違法の範囲を定めるという観点から、刑事罰と同様に限定を設ける」べきとの意見に十分留意する必要があるとした。

 現行規定では「『その事実を知りながら』行う場合」という主観要件が設けられているが、「違法だと当然に知っているべきだった」、「違法か適法か判断がつかなかった」場合や、権利制限に基づき適法にアップロードされたものとの誤った認識でのダウンロードのように、いわゆる「法律の錯誤」があった場合等に違法とされないように、必要な措置を検討すべきであるとした。このような措置が取られれば、意図的・積極的なダウンロード行為のみが違法化され、一般ユーザーが十分な確認をせず、気軽に行う場合等は違法にならない。

 一方刑事罰については、音楽・映画の場合と同様、対象範囲を有償で提供・提示されたものに限定することは当然の前提として、特に必要性の高い事例・行為に厳格に絞り込む必要があり、国民生活への影響を必要最小限にとどめる観点から、適切な限定の選択肢を採用することが適当とした。その際、複数の委員から、「有償著作物」、「原作のまま」、「当該著作物の提供又は提示により著作権者が得ることが見込まれる利益が不当に害される場合」等に加え、反復継続してなどの要件に限定する案が提案されたことにも十分留意する必要があるとした。

 法定刑の水準は、音楽・映画の場合と同様、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその併科」とすること、また刑事罰についてはすべて親告罪のまま維持することが適当とした。

アクセスコントロール等に関する保護の強化

 ビジネスソフトウェア業界、ゲーム業界を中心に、コンテンツの提供方法がインターネットで配信しダウンロードしてもらう形に変わり、ライセンス認証等のアクティベーション方式による保護技術が用いられることが多くなっている。そのため、2018 年に不正競争防止法が改正され、「技術的制限手段」の定義にシリアルコード等によるライセンス認証が含まれることが明確になった上、これを回避するための不正なシリアルコード等の提供が規制対象行為に加えられた。

 検討の結果、著作権法においても不正競争防止法と同様の措置を行うことが適当とした。

著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化

 2018 年に特許法等産業財産権関連法が改正され、特許権等の侵害訴訟における証拠収集手続(インカメラ手続:書類提出命令の判断を行う際に裁判所のみが書類を閲覧して行う手続)を利用できる場面を拡大するとともに、同手続に専門委員が関与できるようになった。検討の結果、著作権法においても特許法等と同様の見直しを行うことが適当とした。

著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入

 現行著作権法では、著作物の利用許諾契約(ライセンス契約)における利用者(ライセンシー)は、著作権が第三者に譲渡された場合、その第三者に対し、譲渡前のライセンス契約に基づき著作物を利用する権利(利用権)を主張することができない。そのため、著作物の利用が継続できなくなるおそれがある。また、著作権者(ライセンサー)が破産・倒産した場合、ライセンシーは破産管財人等から契約を解除されるおそれがある。検討の結果、ライセンシーが安心してビジネスを行うことができる環境を整備するため、特許法等と同様に、登録等の要件なしに利用権を主張できる制度(当然対抗制度)を導入することが適当とした。

行政手続に係る権利制限規定の見直し

 現行著作権法において、特許等に関する審査が迅速・的確に行われるよう、特許審査手続等において、権利者が許諾なく必要な分複製等できることとされている。

 農林水産省からの要望を受け、検討の結果、特定農林水産物の名称の保護に関する法律に基づく地理的表示の登録に関する手続及び種苗法に基づく品種登録に関する審査手続や登録品種に係る調査手続についても、必要と認められる限度で行われる著作物の複製等を権利制限の対象とすることが適当とした。

今後の見通し

 ダウンロード違法化の対象範囲の見直しは、昨年10月に示された、知的財産戦略本部インターネット上の海賊版対策に関する検討会議中間まとめ案において直ちに検討を行うべき旨盛り込まれたことを受けて、急ピッチで検討が行われた。そのため、一部委員から議論が拙速であるとの反対があった上、権利者である漫画家をはじめ、有識者、利用者が、インターネットを利用した創作活動が制限されかねず、一般的なインターネット利用の萎縮も招くとして強く反発したことから、著作権法改正法案の今国会への提出が見送られた。他の項目について法改正を行うのかを含め、現時点では今後の見通しは不透明である。

(芸団協CPRA事務局 榧野睦子)

※1: 検討の経緯については、「インターネット上の海賊版対策をめぐる動向について―リーチサイトやサイトブロッキングを中心に―」CPRAnews91号(2019年1月)をご参照ください。


文部科学副大臣に私的録音録画補償金制度の早期見直しを要望

 文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会では、クリエーターへの適切な対価還元をテーマに、私的録音録画補償金制度の見直しの観点も含めて2015年度より検討を行っている。

 同小委員会は2018年度審議結果をまとめる予定としていたが、結局過去三年間と同様、審議経過報告に留まった。

 問題の先送りは権利者の不利益を一層拡大させるものであることから、2018年12月21日、野村萬芸団協会長、いではくJASRAC会長及び重村博文RIAJ会長は永岡桂子文部科学副大臣と面会し、柴山昌彦文部科学大臣に宛てた「私的録音録画補償金制度の早期見直しに関する要望書」を手渡した。具体的には私的録音録画専用機器等で現在政令指定されていないものを速やかに追加指定するとともに、パソコン、スマートフォン、タブレット端末等汎用機器も補償金の対象とするという課題については2019年度結論を出すことを求めた。