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文化芸術振興基本法の見直しをめぐる動向について

芸団協CPRA

 文化の発展への寄与を目的とする著作権法は、文化芸術の振興を図る上で重要な法律の一つである。現在、著作権関連施策をはじめ文化芸術振興施策の総合的な推進等を目的とした文化芸術振興基本法の見直しが進められている。

1.文化芸術振興基本法とは

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 文化芸術振興基本法は、超党派による音楽議員連盟が中心となって2001年に成立した。文化芸術の振興について基本理念を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図り、心豊かな国民生活と活力ある社会の実現に寄与することを目的としている。成立に至るまでには、芸団協も1984年に「芸能文化基本法(仮称)」を提案するなど、芸能文化に係る基本法の必要性を訴え、積極的な役割を果たしてきた。
 一般的に「基本法」の特色として、具体的な権利や義務を定めるものではなく、基本理念や基本的施策など理念的な規定で構成され、具体的な施策については個別法などによって実現されることもある(※1)。文化芸術振興基本法も、文化芸術の振興にあたっての基本理念を定め、政府は文化芸術の振興に関する基本的な方針(基本方針)を策定し、芸術、メディア芸術、伝統芸能及び芸能など文化芸術の各分野の振興、国際文化交流の推進、劇場・音楽堂等の充実などのほか、著作権等の保護及び公正な利用を図るために、国は必要な施策を講ずるといった規定で構成されている。

2.文化芸術振興基本法の見直しの背景

 文化芸術振興基本法の成立から15年以上が経過する中で、様々な社会状況の変化もあった。国として「知財立国」や「観光立国」を掲げた様々な施策が講じられ、コンテンツの海外発信の強化などを目的とした「クールジャパン戦略」も進められている。また、文化の祭典でもある2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定した。さらに、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、「食文化」を文化芸術振興基本法に明記して欲しいとの要望も現れた。
 そこで、文化芸術振興議員連盟(前述の音楽議員連盟が名称変更)では、文化芸術推進フォーラムからの提言なども踏まえて、文化芸術振興基本法の見直しについて検討を進めた。

3.主な改正事項

 文化芸術振興議員連盟は、「文化芸術創造立国」を実現し、関連分野との連携により文化芸術の新たな価値の創出を目指すとして、改正事項を大筋で取りまとめた。
 改正事項には、基本理念に、文化芸術の固有の価値と意義を尊重しつつ、文化芸術に関連する観光、まちづくり、教育及び福祉など文化芸術に関連する分野にかかる施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がされなければならないことを盛り込むなど、幅広い分野が盛り込まれることから、法令名を「文化芸術基本法」として、基本法としての性格をより明確にしている。また、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「基本方針」に代わって、「文化芸術推進基本計画」を策定し、関係行政機関相互の連絡調整を図るために「文 化芸術推進会議」の設置が盛り込まれている。さらに、文化芸術団体の役割として、自主的かつ主体的に、文化芸術活動の充実を図るとともに、文化芸術の承継、創造、発展等に積極的な役割を果たすよう努める旨の規定を新たに追加している。
 そして、著作権関連分野の施策については、国際交流等の推進に関する施策の例示に「海外の著作権制度の整備等に関する協力」を、著作権等の保護及び公正な利用を図るための施策の例示に「著作物の適正な流通環境の整備」及び「著作権等の侵害に係る対策の推進」を加えて いる。今後、今通常国会での成立を目指し議論が進められる。動向を注視するとともに、成立を受けてより具体的な文化芸術に関する施策の在り方について議論が必要だろう。(著作隣接権総合研究所 君塚陽介)

【注】
※1:法制執務用語研究会「基本法ブーム?」『条文の読み方』56頁以下(有斐閣、2012)、角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第9次改訂版〕』134頁(学陽書房、2009)など
※2:文化庁『我が国の文化政策〔平成28年度〕』2頁の図を基に作成。(▲戻る)