CPRA news Review

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各委員会を中心としたCPRAの取り組みについて

芸団協CPRA

 9月7日の権利者団体会議において、平成28・29年度CPRA運営委員の選出が行われた。これを受けて9月12日に開催された第1回運営委員会では、新期の運営委員長1名及び副委員長2名が選出された。さらに10月7日に開催された第2回運営委員会では、各諮問委員会とその担当運営委員が決定された。
 以上の経緯を経て今期の運営委員及び新体制が決まったことから、すでに、それぞれの委員会が新たな取り組みに向けてスタートしている。
 7つの諮問委員会を中心に、CPRAの取り組みの大筋とその重点課題について、担当委員にコメントをお願いした。誌面スペースの都合上、様々なテーマの中からポイントを絞って述べていただいたことをお断りしておきたい。


 CPRAの平成28(2016)・29(2017)年度の運営体制がスタートした。1993年に発足した実演家著作隣接権センター(CPRA)は、実演家の著作隣接権処理業務を適正に行うための専門機関として活動をしている。2012年に芸団協が公益社団法人になってからは、権利委任4団体の代表者による「権利者団体会議」、並びに「運営委員会」(現在は13名の運営委員)を設置して、独立性、権利者性、及び透明性の高い運営を行っている。今期は権利者団体会議の委員、運営委員ともに前期のメンバーが再任された。私が引き続き運営委員会の委員長を務めることとなった。副委員長は中井秀範委員と上野博委員が就任した。また今期の諮問委員会については現状に合わせた見直しをするとともに専門性の高い委員会の設置に向けて各権利者団体、学識経験者から選任した。また前期に設置された「権利問題研究プロジェクトチーム」は引き続き小回りのきくプロジェクトチームとして時代の変化に迅速に対応するという問題意識を共有し、CPRA一丸となって権利に関する問題を検討し実行する体制の構築を目途に活動していく。また昨今の文化庁移転問題に関しては著作権関係団体とともに「著作権行政を中央に置くことの重要性」の声明を出した。文化芸術推進フォーラムの「文化省創設キャンペーン」の運動にも参加していく。
 設立20年を超えたCPRAに対して権利者の関心は益々高くなっている。今後もCPRAは、権利者のために最大の徴収、最大の分配を目指していく。それには権利者団体会議、運営委員会、各諮問委員会と事務局がそれぞれの役割を果たし、協力していくことが大切である。引き続きご協力のほどをお願いする。
芸団協CPRA運営委員長 崎元 讓


法制広報について

 インターネット社会の進展に伴い、実演家を取り巻く環境が大きく変化している。音楽配信の分野では、昨年のAWA、LINE MUSIC等に続き、世界の定額音楽配信サービスの代表格であるSpotifyが、ついに日本でもサービスを開始した。こうした定額音楽配信サービスやウェブキャスティングから実演家が適切な報酬を得られるよう、法制度や集中管理の在り方について、更なる検討を進める必要がある。また、文化庁の文化審議会著作権分科会では、柔軟性の高い権利制限規定や権利者への適切な対価還元といった重要なテーマが議論されており、実演家の視点から積極的に議論に参加したい。著作権法改正に関しては、TPP協定が大筋合意に至り、TPPに対応する日本の著作権法改正案に、実演家の権利の保護期間延長等が盛り込まれた。法案の着実な成立・施行に向けて、国会の議論やアメリカの動向等を注視していきたい。国際的な動向に目を向ければ、EUやアメリカで大規模な制度改正に向けた動きが活発になっている。またASEANを中心としたアジア地域の発展が目覚ましく、日本のコンテンツの海外展開がいっそう進展することが予想される。
 これらの国際的な動向について情報収集に努めるとともに、特にアジア地域での実演家の権利保護や集中管理スキームの確立・発展といった長期的な課題についても、積極的に取り組みたい。これらの取組みを広報に反映させ、CPRAの活動を周知し、CPRAの認知度を高めるとともに、実演家の権利について理解を深めてもらうよう引続き努めていく。(中井秀範委員)

総務について

 昨年度の徴収総額は前年度比87.1%と大幅な減収となった。要因は一般社団法人映像コンテンツ権利処理機構(aRma)による放送実演の一任型管理事業開始、音楽の入手及び聴取方法の変化に伴うCDレンタル店の減少による貸レコード使用料・報酬減収の歯止めが掛からなかったこと並びに一般社団法人私的録画補償金管理協会の解散及び私的録画補償金制度の形骸化から関連する権利者分配金が大幅な減収となったことに起因する。その結果、二次使用料及び送信可能化に係るレコード実演が徴収総額に占める割合は80.1%となり、徴収科目の多様化が損なわれた状況となった。今後もこの傾向が続くものと推察される。一方、分配業務に関しても精度の向上が望まれる。これらのCPRAを取巻く環境変化及び外的要求に迅速かつ的確に対応するため、権利者団体会議、運営委員会及び各諮問委員会等の運営並びに事務局体制の環境整備が必要である。CPRAを構成する4団体、さらに関係団体とも連携しながら実演家の権利処理を円滑に進めてゆきたいと考えている。(安部次郎委員)

二次使用料について

 二次使用料等の徴収額は、平成27年度には71億円を超え過去最高となった。CPRA収益の約8割を占める要として、今後も安定的な徴収を継続することが期待される。このためには、二次使用料指定団体かつ録音・送信可能化権に関する著作権等管理事業者として、様々な課題に取り組む必要がある。
 特に懸念があるのは、「テレビ離れ」などと言われて久しく、広告料等で成り立つ放送事業収入は、成長を期待し難くなったことである。一方で、放送事業者も視聴スタイルの多様化に対応すべく、インターネットを積極利用する取り組みも始まっている。このような中、今期は以下の3点に注力したいと考える。
 第一に、今期の最大の目標として、日本民間放送連盟との、地上放送に関する平成28年度以降の協議である。徴収額の中で大きなウエイトを占め、交渉は容易ではないが、互いの利益が最大になるよう、多面的な視点で臨む必要がある。
 第二に、送信可能化の集中管理について。インターネットを利用したサービスが広がっており、ラジオ番組だけではなく、テレビ番組の同時配信も気運が高まってきていることから、利用者が円滑に開始できるよう、環境整備をしていきたい。
 第三に、NHKなどの契約済みの事業者に対して、堅実に徴収を遂行する一方、少額徴収事業者に対しても適正な対価を効率的に徴収していく。
 今期中も、2020年の東京オリンピック開催に向け、放送と通信各々の分野においてはますます変化が起こると思われるが、着実に徴収業務を進めるよう努めたい。(上野 博委員)

貸レコード使用料について

 CDレンタル市場は、引き続き縮小傾向となっている。かつて6,000店程度存在したが、現在は約3分の1の2,200店程度に減少し、大手チェーン二事業者が大半を占めるに至った。CDの生産自体が落ち込んでおり、限られたCDレンタル市場の中で、より同業者間の競争が激しくなる可能性も考えられる。更に、音楽の聴取スタイルは着実に変化している。更に、海外大手の音楽配信がサービスインするなど、スマートフォン向けの音楽配信が普及しつつあり、CDレンタル市場は厳しさを増すであろう。
 このような市場動向ゆえ、CDレンタルに係る使用料・報酬の徴収額は毎年減少している。今後、CDレンタルはどのようなスタンスをもって、消費者にアプローチしていくのか注視する必要がある。新譜貸出禁止期間の変更などCDレンタルの新たなサービスが展開される場合は、その利用態様に応じて、慎重に交渉を重ねてルールを形成していきたい。また、徴収額は二次使用料等に次ぐ規模である。今後も、適正な対価を徴収するシステムを継続できるよう努めたい。
 また、業績不振を理由に支払いを滞納する店が散見されるようになってきた。日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合と協力して回収できるよう督促を進めて行きたい。他の権利者団体とも、連絡会などを通じて意見交換をしつつ、更に協力関係を深めて行きたい。(金井文幸委員)

音楽関連分配について

 楽曲使用報告がサンプリングから全量に移行していく中で、前期は貸レコード使用料および商業用レコード二次使用料フィーチャード・アーティスト分配方法の大幅な改訂を行った。何十年ぶりの見直しとなったが、一方で環境変化が激しい昨今、状況を見ながらの迅速な対応を求められる傾向はますます加速しつつあり、効率的かつ正確に、より多くの権利者への分配を目指して、今期も関係団体の協力を得ながら、情報収集や分配方法の精緻化に向けた検討を継続していきたい。
 とりわけここ数年の特徴として、インディーズ楽曲の使用が増加傾向にあり、分配時の資料となる楽曲名や参加者等楽曲情報の収集が困難となる状況も生まれている。現在、音楽の利用が様々なサービスに拡散していく中で、権利情報の一括管理の重要性を指摘する声は官民双方から高まっているが、そうした中で、我が国における音楽関連商品の権利情報を唯一管理している「Music Forest」に期待する向きが広がっている。それを運営するミュージック・ジェイシス協議会(CPRA、JASRAC、日本レコード協会との三者で構成)においても、そうした流れを受ける形で、インディーズ楽曲の取込等について検討を開始しており、CPRAとしてもこれに協力を行う中で、より正確な楽曲情報の入手を模索していきたい。(椎名和夫委員)

海外徴収・分配について

 昨年度は新たに2団体(カザフスタン・AMANATとKOUPIS)との協定を締結した。その一方で放送実演にかかる権利管理をaRmaに移行するにあたって、スペイン・AISGEとの契約を解除、フランス・ADAMI、ポルトガル・GDA、オランダ・NORMAの3団体との契約の一部変更を完了した。現在では、アフリカや南米の団体と今年度中の締結を目指し、交渉を進めている。
 今期の課題としてはまず、昨年度SCAPR(実演家権利管理団体協議会)に正式統合された2つのデータベース、すなわち実演家情報を管理するIPD並びに作品情報を管理するVRDBに提供するためのデータ整備が急務となっている。また海外における日本の楽曲の使用実績等を調査しつつ実際の分配データを精査することにより各団体からの徴収額増加を目指したい。一方アジア各国でも続々と権利管理団体が設立されている中、昨年度同様にマレーシア・RPMに対し委任管理、徴収分配、データ整備等の実務面からサポートする研修事業を実施するほか、本年5月にSCAPRへの参加が承認されたインド・ISRA、来年度参加を予定しているベトナム・APPAについても現状を調査しつつ必要に応じて交流を深めることで、アジア地域におけるCPRAのプレゼンスを高めると同時にアジア地域からより多くの徴収が実現できるよう努力していきたい。(安部次郎委員)

データセンター推進について

 各種データの肥大化への対応及び作業の効率化を図るべく、分配業務管理システムの機能追加・改修を進めている。前期においては、楽曲使用報告全量化に対応するため、データ取込作業の高速化機能を実装したが、データの肥大化に比例して作業量も増大していくことから、インターフェースまわりの再構築を含め、より効率的に業務を進めることを可能とするシステムづくりに取り組んでいきたい。分配のために利用している様々な資料データ等についても、音楽業界の業態の変化等により影響を受ける可能性が多分にあることから、音楽関連分配委員会とも連携しつつ、情報収集を怠ることなく、柔軟かつ安定したシステム運用に取り組んでいきたい。
 また、関係団体の連携強化については、引き続き「権利者団体連携システムMAPS」を利用した情報共有を進めていく予定であり、機能追加・改修について、各団体実務者によるシステム作業部会を定期的に開催して意見・要望を取りまとめた上で、計画的に実施していく。各々のニーズにあった利便性の高い機能を実装することで、より効果的な情報共有を目指していきたい。また、前期より開始したaRmaへの映像委任データの提供については、これまで以上にセキュリティおよびデータ精度に配慮しつつ、引き続きaRmaの業務を支援する体制を強化していきたい。(椎名和夫委員)

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