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実演の影響力を信じて

芸団協CPRA権利者団体会議議長/一般社団法人日本音楽事業者協会会長/一般社団法人映像コンテンツ権利処理機構理事長 堀義貴

 リオ・デ・ジャネイロで開催されていたオリンピック、パラリンピックが終了しました。選手たちの躍動する姿を見て感動された方も多かったのではないでしょうか。スポーツと芸能・文化は親和性が高いと言われています。古代オリンピック、そして近代オリンピックの初期まで、芸術競技も存在していたそうですが、現在でも、開会式等のセレモニーでは実演芸能とのコラボレーションが随所にちりばめられています。今回のリオオリンピックでは、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルなど、ブラジル音楽界のレジェンドたちがパフォーマンスし、マスコットキャラクターもトム&ヴィニシウス(トムは言わずと知れたアントニオ・カルロス・ジョビンの愛称、ヴィニシウスはジョビンとともに多くのボサノヴァを手掛けたヴィニシウス・ヂ・モライス)と名付けられ、シンボリックなかたちで音楽の財産が全面に押し出されていたように感じます。オリンピック、パラリンピック閉会式におけるハンドオーバーセレモニーで見せた日本のパフォーマンスは、日本が誇る世界のアイコンであるアニメやゲームのキャラクターをうまく活かし、音楽と躍動するダンスとをシンクロさせた、歴史と伝統に裏打ちされた未来志向の東京を標榜した、大変素晴らしい演出だったと思います。

 先日、経団連が中心となって開催された「ジャパンコンテンツ総合会議」では2020年に向けて本格的なコンテンツ活性化に向けた取り組みが確認されました。経済成長の呼び水として産業界がコンテンツに注目する姿勢を示していることは大変意義深いですが、韓国ではすでに90年代前半からこのような手法で自国のコンテンツ産業を拡大してきました。2020年までの4年間、たしかに日本は世界的な注目を集めることになるかと思います。しかし、コンンツ産業が世界的影響力をつくりあげていくには、あまりにも期間が短すぎます。重要なのは、4年後のその先を見据えたビジョンや戦略をたて、海外からのお客様をいかにリピーターにできるか。そのため、国全体を巻き込んだ総合的なプロデュース力と、彼らに訴求できる実演家のパフォーマンス力が問われているのだと思います。

 私は人間の身体表現力を信じています。昨今、さまざまな分野の仕事がAIに代替されるだろうという予測が多く聞かれるようになりました。先の知財推進計画でもAI創作物の保護の可能性について言及されており、知財分野においてもAIの影響は不可避と考えるべきでしょう。そしてAIによる代替は実演の分野でも起きるかもしれません。最近、実写にしか見えない女子高生キャラクターSayaが話題になっていますが、こうしたキャラクターにAIが動きを与えて、人々に感動を与えるということは充分想定されます。その結果として引き起こされる状況がどのようなものか、冷静に推測していく必要があると思いますが、私は少なくとも真の意味で、決してAIでは代替できない人間のパフォーマンスが持つ無限の可能性があると思っています。というのも、AIによって導き出された実演のパターンは、ビッグデータの解析から得られた大衆に受けるものかもしれませんが、それはこれまでの成功事例から導き出されたある種の「型」であり、いずれも既視感のあるものとならざるを得ません。われわれは、これまでまったく見たことも聞いたこともないような体験や意外性を追求し、それを人々に提供し、感動を与えようと努力しています。そうしたパフォーマンスこそが真の実演であり、わたしたちはその影響力を信じて邁進するしかありません。われわれの業界の市場規模は、ご存知の通り、わが国全体の視点で捉えるとたいへん小さいものです。放送業界で最も高く、約4兆円ともいわれていますが、それでも家電メーカー1社の売上高に遠く及びません。時代は我々を待ってはくれません。前例にとらわれることなく、検証と実行を繰り返し、新たな時代に向けた適正な実演家の権利の在り方を求めていきたいと思います。関係各位には引き続きのご協力をお願いしたく存じます。