SANZUI vol.05_2014 autumn

ロングインタビュー 仲間由紀恵

Photo / Ko Hosokawa   Text / Rie Shintani

最近は、あらためて役づくりの楽しさを感じています。
自分じゃない者を演じるからこそ思い切れるんです。

自分とかけ離れた役が演技の幅を広げる

 その美しさにドキドキする。現在、NHK連続テレビ小説『花子とアン』で、ヒロイン花子のよき友・蓮子を演じ、美しさと存在感ある演技で私たちを釘付けにする、女優の仲間由紀恵さん。彼女の内側にはいったいどんな情熱、ドキドキがあるのだろう。

――代表作にしてヒット作である『TRICK』や『ごくせん』のイメージが強いからこそ、今回の蓮子のような役はとても新鮮に感じます。

 そうなんです。でも、イメージが付いているからこそ次の作品で「全然違うね」と楽しんでもらえることもあって。そんな周りの反応が楽しくもあります。私自身も、この前はこういう感じだったから今回はこういう感じでやってみよう、というように自分の目標というか、役を突き詰めていくうえでの手助け、道しるべにもなっていますね。ですが、自分にまったくないものを演じなくてはならないときは戸惑うことも。それをどう理解して乗り越えるかが挑戦でもあります。

 たとえば、テレビシリーズ『TRICK』の奈緒子のように、転んでみんなに笑われるお芝居。当時まだ二十歳そこそこで駆け出しだったので、どう演じていいのか、悩みました。そんなもがいている感じも、いま思えばよかったなぁと思います。何とかして自分のなかで納得できるところを見つけて、これなら大丈夫という気持ちのうえでの突破口を見つける、それが大変でした。後になってみてわかることなんですが、自分にとってちょっと大変だったな、と思った現場の方が、後からすごく評価されたり、いい言葉をかけてもらえることが多い気がするんです。そういうことを含めて、最近はあらためて役づくりの楽しさを感じています。自分じゃない者を演じるからこその楽しさを。自分じゃないからこそ思い切れるんです。

――いままで演じてきた役のなかで自分とかなりかけ離れていた役、思い切れた役はどの役ですか?

 世界観を含めて、やっぱり『TRICK』の奈緒子ですね。今年『トリック劇場版 ラストステージ』が公開になりましたけど、14年演じ続けてもわからないことだらけ、謎が多すぎるんです、このシリーズ(笑)。撮影現場にいるときも、謎を解いてはいけないという暗黙のルールみたいなものもあったほど。でも、そういう現場だからこそ教えてもらったこともあって。全部を完璧にわからなくてもいい、そんな作品や現場があってもいいという、ひとつの受け取り方ですね。

――たしかに、面白いだけではない、想像力を鍛えてくれるシリーズでした(笑)。14年、奈緒子を演じたことによって、奈緒子の要素が仲間さんに浸透したりしていますか?

 もしかしたら、知らないあいだに奈緒子のあのヘンテコな要素が自分に植えつけられているのかもしれないですね(笑)。あの役から学んだのは、コミカルな芝居をするときは笑わせようと思っちゃいけない、気負わないということ。お芝居のときも、今日のような写真撮影のときも、気負わないよう意識するようになりました。今日の撮影のイメージは、いま朝ドラの『花子とアン』の撮影中ということもあって蓮子ではあるんですけど、蓮子を演じていないときの私、現場にいるときの素の自分に近い感じです。

 自分が年齢を重ねてきたということは、当然、二十代の若手の役者さんたちが増えているということでもあって、『花子とアン』の現場で「先輩!」「仲間さん!」と声をかけてもらうと、あ、そういう立ち位置になったんだなって。なので、気負わずに、でも先輩らしく、年上の人らしくそこに居たいし、お芝居に関しても引っぱっていってあげたい。彼らの頑張りを〝見る〞という意識を持って現場にいたいんです。なんだか、お母さんみたいですね(笑)。

――ご自身のなかでのそういう変化を感じたのは最近ですか?

 この朝ドラですね。『ごくせん』は教師役だったので生徒役の若い俳優さんがたくさんいましたけど、その作品以外で、こんなにも若い役者さんのいる現場はなかなかなかったので、すごく楽しいです。特に今回は吉高(由里子)ちゃんが主演として花子を頑張って演じている。彼女を見ながら、ああ、主演の人はこうやってみんなの手厚いサポートを受けているのかと、みんなが主演に愛情を注いでいる感じが見えて、私自身も彼女を支えたいと思うんです。自分が主演のときも同じようにみなさんがサポートしてくださっているのはわかってはいるんですが、具体的なところまでは把握していなかった。主役が知らないところでみんながずっと主役のことを考えていて、いかによく見えるか、いかに役が生きるかを突き詰めてくれている。そういう姿を見ると、なんて素晴らしいんだろうって思いますし、私も精いっぱいサポートしたいって思うんですよね。

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