CPRA news

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広報から見る芸団協CPRA20年の歩み

芸団協CPRA運営委員(広報担当)
松武秀樹

情報社会と常に向き合って

 1993年に設立された芸団協CPRAは、まさに情報社会の進展とともに歩んできた。その前年にMD(ミニディスク)が発売され、その後iPodが登場し、大量の音楽をコピーして持ち歩く傾向に拍車がかかった。一方、映像についてもDVDが1996年にデビューし、その後、ブルーレイ、ハードディスクと大容量化、高画質化が進んでいる。放送に眼を転じれば、1991年に民間による初の衛星放送局、WOWOWが本放送を開始し、その翌年に初のコミュニティ放送局開局、1996年にCSデジタル放送が開始し、2011年地上波テレビはデジタル放送に完全移行した。そしてなんと言っても、1995年以降、インターネットが急速に普及した。このようなデジタル化・ネットワーク化による急激な変化は、実演の制作や利用、さらには実演家の権利保護に大きな影響を与えずにはいられない。情報社会化の大きなうねりと向き合った芸団協CPRAの広報活動は、常にこの点への関心・問題意識を持って進められてきた。
 このような姿勢は、芸団協CPRAが最初に行ったイベント、'96CPRAフォーラム「デジタル時代のメディアと実演」にも如実に表れている。高城剛氏らに、当時最先端の技術であった、デジタルTV放送、インターネット、CDエクストラ、DVDについて解説してもらっている。また私もミュージシャンとして参加し、司会者(モーリー・ロバートソン氏)が即興で歌った歌をパソコンで電子音に変換し、楽譜を作るというデモンストレーションを行った。当時の記録からは、テクノロジーの進化にどこか受け身で接してきた実演家の消極的な姿勢を反省し、今後は生実演ですらメディアと無関係ではあり得ないのだから、もっと真剣にメディアとの関係を考え、新しいメディアを道具として、あるいは流通経路として積極的に使いこなす必要があろうという強い問題意識がひしひしと伝わってくる。 

CPRAnewsとウェブサイト

 広報活動を本格化したのは、1999年以降である。1998年12月に組織の見直しが行われ、翌年度より広報担当の部会が設置されるようになった。実演家著作隣接権を管理する団体として芸団協CPRAの名前を広く浸透させるため、ロゴマークを作成し、2000年7月、CPRAnewsを創刊、その翌年にはウェブサイトを開設した。
 CPRAnewsは、①芸団協CPRAの名称、呼称を徹底して広報すること、②実演家が直面する権利問題を浮き彫りにすること、③国内外の実演家にまつわる話題、ニュースを迅速に集めること、④芸団協CPRAの活動を正確に伝えること、を目指して創刊された。そのため、今号で73号となるCPRAnewsを遡って読んでみると、著作権等管理事業法の施行から放送実演の一任型管理の開始、視聴覚的実演の保護に関する国際的検討、私的録音録画補償金制度の見直しなど、芸団協CPRAあるいは実演家がこれまでどのような問題に直面してきたか見えてくる。一方でブロードバンドやインターネット放送、音楽配信など、常に技術の進化が実演家に与える影響を意識した記事にもこだわってきた。
 他方、ウェブサイトはCPRAnewsでは難しい即時性と双方向性を意識した情報発信を心がけた。当初は、使用料・報酬などを受領する権利があるにも係わらず芸団協CPRAに委任登録していない権利者捜しにも大いに貢献した。

実演家の団体ならではのキャンペーン

 芸団協CPRAとして初めて行ったキャンペーン活動が、2007年のCreators to Consumers【c2c: はじめの一歩】である。文化審議会での私的録音録画補償金制度の見直しを機に開始し、アーティストや演奏家などのCreatorから、音楽を愛するConsumer の方々へ、同制度の大切さを訴えていくことを目指した。音楽を通じたCreatorとConsumerの大切な絆が壊されないように。そんな想いを込めたキャンペーンは、実演家の団体らしく、ライブを中心とした内容であった。
 翌2008年は、違法音楽配信対策として、Music Guardians(音楽自警団)活動を開始した。応援するアーティストの素晴らしさを伝えるためなど、善意の、権利侵害に無自覚な違法配信者の存在に着目し、Music Guardiansの一員として、自発的に違法音楽配信サイトの監視・通報をしてもらうことで、違法配信の撲滅だけでなく、著作権・著作隣接権保護意識の醸成も図るというユニークな試みだった。夏フェスを中心として積極的に団員を募り、通報数は総計65万件を超えた。このような地道な活動が、2012年の私的違法ダウンロードの罰則化に多少なりとも貢献したのではないか、と自負している。

映像分野での働きかけ

 音楽だけでなく、映像分野でもキャンペーン活動を行っている。視聴覚的実演の保護に関する条約が国際的に検討され始めたことを契機に、2001年、文化庁は「映像分野の著作権等に関する懇談会」を設置した。芸団協CPRAは翌年4月、映像分野の実演家の権利見直しを求めるキャンペーンを行った。「ボカァ、ただじゃないですよ」をキャッチコピーに森繁久彌氏の楽屋での姿を撮ったポスターは強力なインパクトを残した。なお、この国際的検討は2012年6月に、視聴覚的実演に関するWIPO 北京条約としてようやく結実した。芸団協CPRAでは同年10月に記念シンポジウムを開催し、海外の著名な専門家の講演とともに、パネルディスカッションを行い、今後の国内での対応についても訴えかけた。
 著作隣接権だけでなく、肖像権・パブリシティ権の保護も大切である。芸団協CPRAではハンドブックの作成やセミナーの開催、意識調査などを通じて、肖像権・パブリシティ権の保護の必要性についても広く喚起してきている。

最後に

 芸団協CPRA業務の柱はなんと言っても使用料・報酬の徴収分配業務で、広報の目的は、それらを円滑にすることであろう。これまでの様々な広報活動を通じて、放送事業者、CDレンタル事業者等利用者の方々には芸団協CPRAの名前がだいぶ浸透したのではないか、と自負している。しかし、UGCサイトなどでバーチャル・アーティストが歌う作品等が自主制作発表され人気となっているように、今や一般ユーザーが実演を利用し、自ら実演を行う時代となっている。そのため、これまでのような権利者並びに関係業界に留まらず、少しでも多くの方々に実演芸術の素晴らしさ、楽しさを知っていただき、実演の価値や実演家を保護する必要性を訴えていく必要がある。さらに、政府がクールジャパンを声高く標榜する昨今、海外に向けた広報活動も強化していくべきであろう。
 広報活動はすぐに効き目が現れる特効薬ではないが、漢方のようにじわじわと効果が出てくるものではないだろうか。そのために、どうすればより広く深く伝わるのか、試行錯誤をしながら地道な活動を続けていきたい。

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